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天野花 with Cattle Guitar / Part.1 Interview

一番伝えたいのは歌だなっていつも思います

ミュージシャンにとっての特別な1本にクローズアップし、楽器に関するストーリーやこだわりを撮り下ろし写真と共にレポートする「Open The TREASURE BOX」。今回は八丈島出身の女性シンガーソングライター、天野花が登場。映画『Last Lover』の主題歌「Last Lover」も収録したデビューミニアルバム『甘い夢の終わり』を2020年1月にリリースし、新型コロナウイルスの影響を受けつつも、徐々に活動のペースを戻している。彼女の新たな愛器である手工ギターのキャトル・ギターと、音楽への姿勢について話を伺った。

天野花
『甘い夢の終わり』
SPACE SHOWER NETWORKS
CD DQC-1641
1,818円(税抜)

柔らかくも力強く、伸びやかで時に優しく語り掛けるような歌声、切ない世界観が聴く者の心を震わせる八丈島出身のシンガーソングライター、天野花。島で生まれ育った彼女が初めて生で、ギターを持った音楽に触れたのは中学生の時だったそう。

「元々歌うのが好きだったんですけど、引っ込み思案で自分を表現することが苦手だったんです。そんな中学2年生の時、島にバンドが歌いに来たんですよ。隣の島のアマチュアバンドだったんですけど、それを観た時に“あ、私もギターを持ったら歌えるかもしれない”みたいな(笑)、なぜだか分からないんですけど、そんなことを思って。それでアコギを買いました。最初は初心者用ギターから始めましたね。その後は、当時YUIさんが好きだったので、彼女に憧れてフェンダーのアコギを使っていました。上京してから、今メインで使っているヤマハとキャトル・ギターに出会いました。」

ギターを手にすることで、自分を表現する術を身に付けた彼女。作詞・作曲も自ら手掛けている。

「最近はピアノで作ることも増えたんですが、基本はギターです。ポロポロと部屋で1人で弾きながら作曲することがほとんどですね。」

2020年1月にリリースされたデビューアルバム『甘い夢の終わり』は、映画『Last Lover』の主題歌に抜擢された楽曲をフィーチャーし、どこかコンセプチュアルにまとめられた作品である。本作の軸にもなっている映画主題歌「Last Lover」のようなテーマ性のある楽曲の制作について、

「映画を観たリスナーとしての目線と、監督の意向のバランスを取るのが難しかったです。最初に映画の台本と仮編集された映像を見せていただいて、“自由に作ってください”と言っていただいたので、アルバムにも収録している「最後の恋人」を作ったんですけど、監督が最初に聴いてくださった私の歌がバラードだったっていう印象もあってか、監督としては女性目線の泣けるバラードというイメージがあったそうで、それとは逆の方向性で曲を作ってしまって。改めて作り直しました。」

と、普段の曲作りとは異なる難しさを話していたが、映画の世界観を表した美しい1曲に仕上がっていて、彼女のソングライティング能力の高さをまざまざと感じた。アルバムの楽曲はほぼ全編バンドアレンジで、近年はバンド編成のライブを行うこともあるが、ルーツは弾き語りにあると語る。

「音楽を始めた時から、今までずっと変わらないのが弾き語りですね。バンドは最近です。バンドはむしろ苦手というか、アンサンブルの中で自分の声のバランスを探る作業みたいなものに結構時間が掛かったりするので、なかなか慣れないです。元々フォークソングとかアコースティックな曲が好きなので、奇をてらうよりはシンプルに歌があってっていう。一番伝えたいのは歌だなっていつも思います。」

コロナ禍において、本来予定していた最新作のレコ発ワンマンも延期になるなど、悔しい思いをしたこともあったそうだが、現在は政府が示すガイドラインを遵守しつつ、有観客と配信を織り交ぜたライブ活動を再開している。

「今までと全く違う感覚を持ってライブしなきゃいけないんだなって、ふと冷静になった時にヒヤッとすることもあります。でも私がそう思う以上に、今こういう状況で足を運んでくださっているお客さんはもっと不安だったり、色んな思いがあって、それでも観に来てくださって。」

ただ、困難な状況の中にも前向きな発見があった。

「配信ライブも最初は慣れなかったんですけど、だんだんと画面の向こうの遠いところで聴いてくれてる人がいる、そこに向けて歌うっていう感覚を持てるようになってきて、配信ライブをやらせてもらうことで逆により想像できるようになりました。だから良かったこともありますね。」

思うように活動できない期間でも、曲作りは止めていない。

「本当に私、音楽がないとダメで(笑)。つらい時ほど一心になれるので、音楽があって良かったです。」

彼女ならこの難局も糧にして、名曲を生み出してくれることだろう。ここから先がさらに楽しみになった。

天野花official website はこちら

(Part.2 天野花の使用機材に続く)

Text by AIRI OKAMOTO Photo by TOSHIHIRO KAKUTA

※本記事は月刊Player 2021年1月号より再編集したものです。

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