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細川大介さん(LACCO TOWER)×菅波栄純さん(THE BACK HORN)こぼれ話

細川大介がブログ『告白』に綴っていた、菅波栄純とのこと。ギタリストとしての2人の繋がりをさらにさらに、深堀りすることが出来た対談に〜

Player・Winter号に掲載したお2人の対談はわたし自身の周りからもとても大きな反響をいただきました。まずそもそも“細川大介さんのレフティ転向は知らなかった”といったところから、“栄純さんの「1人遊び」の話が興味深い”、“いち人間的視点として捉えても2人の考え方が面白かった”…とっても手前味噌なのは分かっていますが、たとえギタリストではなくともどこか心に残る内容があった対談を誌面を通してお届けできたのではないかなと思っています。途中から立ち会う形で話を聞いていた編集長も“このお話は非常に有意義”と言い、誌面上ではページを増やす形で展開させていただきました。“ロックの過渡期にいる”40代の先輩・後輩ギタリスト対談は誌面も是非お読みいただきつつ、その未掲載部分の“こぼれ話”をこちらでお届けします!

  誌面の方で大介さんは、栄純さんのYouTube(「すがちゃんねるYOU 作曲研究所⇨@sugachannelu)を見たり、“THE BACK HORNの曲を解析している”といったことも引き合いに出しながら、お2人それぞれの曲作りの部分も垣間見えてとても面白かったです。対談中は大介さんが栄純さんに色々と質問をしまくっていた印象でしたね。
細川:曲が出来ない、っていうのはミュージシャンにとって辛いし、LACCO TOWERとしても曲作りの時っていうのがやっぱり大変で。にっちもさっちも行かない状況を繰り返しながらアルバム1枚作れた、っていうのが僕らのやり方なんですね。でも栄純さんは1人遊びを通して、“曲が作れる!最高!”って思えるのが素晴らしいなと思って。
菅波:それは逆のストレスもあるんだけどね。こんなに曲が作りたいのに作れない、っていう。
細川:それは時間がない、という意味でですか?
菅波:そうそう。
  栄純さんは曲作りで困ったりすることはないのでしょうか?
菅波:悩む時間はあるんですけど、それも含めて遊びに入っちゃってて。悩んでることも楽しい、“いや〜、この1行が出来ねぇな”って考えてるのも楽しい。でも、自分と同じぐらいに曲を作りたい人っていうのは多分、この世にも数人しかいないと思うぐらい出会ったことはなくて(笑)。
細川:栄純さんが曲を作るっていうのは、例えば何か楽曲を聴いてて“曲作りたい!”みたいな感じになるんですか?“この曲みたいな楽曲を作りたい”みたいに?
菅波:あるある、それもあるね。スポーツに近くなるところもあるんだけど、あの音色を使ったら似てる感じになるよな、っていうのもあったり、あとはね、メッチャ腹が立った時だね(笑)。
  栄純さんにそういう時があるんですね(笑)。
菅波:あるある、心の中で腹が立ってても自分も悪いし、とか(状況は)色々とあるじゃん、その場では発散できなくてとか。
細川:それで曲を作り出すんですか(笑)?えー、それはすごい!
菅波:近年のバックホーンの曲だと、「心臓が止まるまでは」(『カルぺ・ディエム』/2019)っていう曲の2番の歌詞に“罵詈雑言土鍋で 三、四日ほど煮込んで” それを相手の頭にぶっかけたい、っていう歌詞が出てくるんだけど、そういう風に変換してるね(一同笑)。
細川:怒りがそうやって変換されてるんですね!
菅波:誰に腹が立ったとかは言わないけど、メッチャ腹が立ったんだよ。でも“死ね”みたいなのは俺の中では歌詞としては美しくないと思ってるから、違う言い方でどう面白く、インパクトのある言葉にできるか。それが変換できたら、怒ったこともラッキーって言うか(笑)、肯定できるじゃない。悲しいことも同じなんだけどね。
細川:それはすごいなぁって思っちゃいますね。僕は例えば、嫌なことがあったりすると制作とかは出来なくなっちゃいます、逆に。考えすぎちゃって。でもそれを落とし込めるっていうのは圧倒的な凄さ、じゃないかと思っちゃいますね。
菅波:分かる、それも分かるよ。

THE BACK HORN「心臓が止まるまでは」MUSIC VIDEO

  細川さんもそういう時に一度、敢えて楽曲制作に向き合ってみるのも良いかも(笑)?今のお話で行くと、バックホーン2022年リリースのAL『アントロギア』収録「戯言」の歌詞も怒りだったのかな?と思ったりしますね。
菅波:あれは怒りですね、詳しくは言えないですけど知り合いがネットでメッチャ叩かれたんですよ。何も悪くないじゃん?って思ったんですけど、その怒りですね。スゲー、ムカついて本当にコイツは戯言ばっかり言いやがるなと思って。それを自分のパターンだと大体、ユーモラスにするのが多いですね。ちょっと面白く書くっていう。
細川:怒りの時っていうのは歌詞から作っていくんですか?曲からなんですか?
菅波:「戯言」に関しては(山田)将司(vo)が書いたメロディに俺が歌詞を付けたんだけど、あれはそのメロディを聴いた時に怒りを思い出したの(笑)。メロディに呼ばれて、何だかムカついてきて怒りが蘇ってきたんだよね。それで書いたかな。
細川:いや〜、メチャメチャ勉強になるなぁ。
菅波:俺ね、感情を発散できないのよ。皆は分かっているのかどうかも分かんないですけど、自分が今どういう状況なのかっていうのを分かってなくて。ムカつくって思って、それを自覚するまでにタイムラグがあると言うか。後々になって“あれ、よく考えたらスゲー腹立つな”ってことがすごく多いのよ。その場で人に言えたら気持ち良いんだろうなっていっつも思うんだけどね。だから例えば、ムカつく上司に対して反骨する「サラリーマン金太郎」(本宮ひろ志著)とかもあるじゃないですか、あぁいうのがメッチャ好きなの(笑)、自分が出来ないから。だけど、発散できないからこそだし、時間差も生まれちゃってて、ムカついた瞬間よりはちょっと冷静になってるから、これを発散するなら曲にするしかない!みたいな感じだよね。
  曲にすることで怒りも最高の体験になる、的な。
菅波:本当、そうですね。それで打ち消せる。相手は何もダメージを受けないけど、世の中にこの怒りは伝えていきますからね!ざまあみろ!感はあるじゃないですか(笑)。
細川:それが僕の場合だと、“さぁ、曲作りやるぞ!”って状況に持っていかないと、やっぱりやれないから。制作が間に合ってないからやらないといけないっていう時でも、どうやったら自分をそこに集中させるかっていうのが、すごく大変で。
菅波:そういう時、どういう手法を使ってるの?
細川:まずは部屋をメッチャ片付けます(笑)。とにかく1回綺麗にして、ほとんど何もないような状況を作って、部屋からも基本的に出ないようにしてすごく集中してそのモードに入っていくようにします。
菅波:おぉ〜、まず集中ね。
細川:そこで動画サイトも見たりしながら音楽をメッチャ聴いて、“僕は今こういう世界にいるんだ”って形で入っていかないと出来ないですよね。
菅波:すごいね、それは面白い。それは性格もあるかもしれないね。
細川:だんだん、こういう形になっていった感じですけどね。ある意味、自分を変な・違う自分に憑依させる、じゃないですけど(笑)。ギターの練習にしてもそうですね。
菅波:大介だって1人なわけだもんね。見てる側はこのギタリスト然とした姿が全てだって思っちゃうけど、(見えない部分もあるし)、逆にダラダラしてる時とかもあるんでしょ(笑)?
細川:ありますあります(笑)、はい。ライブでメイクするのも普段の自分と変えたい、じゃないですけど、メイクをした方がよりギタリストになれる。普段だったら恥ずかしくて出来ないことがちょっと出来るようになる、みたいな(笑)。僕、ライブはカッコつけなきゃいけないと思ってるんで。
菅波:分かる、分かる。ライブはそうだよね。
細川:儀式的なところみたいな、普段の生活でも“これをやったらこれをやる”みたいにチェンジしながらやっている感じだから、全て生活が音楽ですっていう栄純さんみたいな感じとは全然、タイプが違って面白いなぁって今日の話を聞きながら思ってます。
菅波:日頃から素振りしてる感じに近いんだよね、ラッパーの人とかも街の看板見ながら韻を踏んじゃうって言うじゃん(笑)、そういうゲームをしちゃうのと一緒で。歩いてて“焼肉〇〇”の看板を見たらそれをテーマに、フレーズないかな〜って。そうやって素振りをしていればいざっていう時にシームレスに行ける。それは昔っから頭の中で一番完結できるのってやっぱり作詞でさ、頭の中で作曲も出来れば俺が寝たきりになったとしてもイケるなって思ってるの。死ぬまで作詞作曲したいなって思った時にね、ツールも進化するし口頭で伝えて打ち込んだりしてもらえば良いかもだけど、歌詞と曲のコードとか、あと構成が説明できれば楽曲になるわ、って。
細川:もしかすると頭に直接USBをつけて、曲が生まれたりするかもしれないですしね。
菅波:俺が死ぬ頃にはそんな風になってるかもしんないね。とにかく、死ぬ直前までやり続けて残したいなと、ここまでやって来たら(笑)。本当に死ぬ直前の、瞬間で歌詞書いて曲にした人って多分いないから、その瞬間を皆知りたいと思ってると思うんだよね。それがメッチャ、バズるかも知んないじゃん(一同笑)。その後すぐに死んじゃうとしてもさ。でも、そうやってでも残したいなって思ったりしてるんだよ。

LACCO TOWER「棘(とげ)」Music Video

【対談後記】

今回の対談を通してまず、栄純さんもギターを弾くにあたってフィジカル面で大変なご苦労をされていたのを初めて知りました。それと栄純さんは考え方(と言うのか思考回路と言うのか)が、一言で言うならばとてもポジティブ。例えば自分と縁のない世界の難しい本を読むとして“難しければ難しいほど読み甲斐がある、全然自分と関係ない世界の本をどれだけ分かった気になれるかっていう遊びで読んでる”といったくだりが本誌にありますが、そのお話になるほどな〜と思って以来、仕事で困ったりしても“これはどうこなせば良いか考えろっていうミッションなのだな”と思うようになった自分がいます(本当です)。
  さて12月のことですが、LACCO TOWERのワンマンライブが地元・群馬県伊勢崎市でありました。約2時間のライブ中、大介さんは途中からレフティのギターも持ち替えながら演奏している姿に、今後“レフティとしてLACCO TOWERのツアーを全部回る”と本誌に語っていましたが、それを近いうちに達成してしまいそうな…でもその裏には、大介さんの努力はとてつもなく半端ないものがあるのが想像に難くないライブだったと。それを目の当たりにしたと思っています。それでも表情にはギターを弾くことができるという、そのことに対して心から幸せに感じている気持ちが漲っていたように映っていたのがとても清々しかったです。
ポジティブ、前向き、苦労や努力。バンドマンであろうがそれら全てを内包しながら歩んでいる中で、乗り越えた先にはまた次に乗り越えるべき何かが待つ。この先もそれらを繰り返していく中で、ギタリストとしてのお2人がこれからどんなプレイだったり、生き様を見せてくれるのか。“1人の人間”として歩む姿にこれからも注目していきます!

Edit By CHIE TAKAHASHI

Player 2022年 季刊Winter号では菅波栄純(THE BACK HORN)×細川大介(LACCO TOWER)のスペシャル対談掲載!

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