3の倍数月2日発売の季刊音楽誌『Player』のウェブサイト。最新号情報はもとより、誌面でできない音楽、楽器情報を発信していきます。

HIROSHIさん(FIVE NEW OLD)×井上竜馬さん(SHE’S)対談こぼれ話

ファンも一緒に自分たちがこの界隈のカルチャーの主役として、作っていく立場に

2022年からPlayerは季刊誌となり、通常号は年4冊の発売になりました。12月発売のWinter号が通常号としては2022年のラストを飾る号で、吉川晃司さんの写真集かと見紛うような表紙から特集のインタビュー、ページ内では吉川さん愛用のサンドバックも掲載されているところもPlayerならでは(笑)。“ならでは”と言えば、編集長がSNSで発した言葉を借りると“ミュージシャンの対談取材は特に音楽雑誌ならではの企画”と、わたし自身も思いながら対談を企画・展開させてもらってきました。そのWinter号では2つ企画しその1つが、FIVE NEW OLD(以下FiNO)・HIROSHIさん×SHE’S・井上竜馬さんの対談。FiNOは 1月から最新曲「Trickster」がTVアニメ「HIGH CARD」主題歌としてオンエアされる上、このコロナ禍で毎年開催が見送られてきたLINE CUBE SHIBUYA公演がいよいよ2023年7月に開催の発表が!LINE CUBE公演まで自身の13周年アニバーサリーとかけて「13 Card Tricks」と題して13の仕掛けを繰り出してくるらしい!?し、かたやSHE’Sは2月〜3月にかけて管弦楽団を従えてのホール公演を東京、彼らの地元でもある関西・大阪、そして初めて名古屋でも開催することが決定!2023年スタートから期待感ふくらむ発表や活動が続く両バンドのフロントマン対談・未掲載のこぼれ話をこちらでお楽しみいただきますが“こぼれ話”ゆえ、この年末年始に絶賛発売中の本誌も併せてお読みください。朝岡英輔さん撮影のお写真もお2人の表情がとても柔和で良い笑顔ですので、ぜひ!

【お詫び】掲載号・P124内にあるHIROSHIさんの機材紹介内、フェンダー・ストラトキャスターの2行目部分「WATARU(g)も『テレキャス』を使い始め」とありますが、正しくは『ストラト』です。ここに訂正してお詫び申し上げます。

 誌面ではお2人がギターに触れたきっかけも語ってもらっています。それこそ16年ぶりにアルバムがリリースになったばかりのELLEGARDEN(以下エルレ)については、HIROSHIさんの言葉を引用すると“俺ら世代はエルレを避けて通れない”、竜馬さんも“(学生時代に)お年玉をもらったらエルレのバンドスコアを買い漁って弾いた”といったことを語っておられますが…。
HIROSHI:でもエルレの音に出会う前に、竜馬は中学の時に漫画の『BECK』(ハロルド作石著)を読んで“俺、ギターやわ!”って思ったんやろ?それって、音がないやん(笑)?そこがすごいオモロいよな!
井上:そう、最初は見た目だけで入ったんですよ(笑)。
HIROSHI:何かの音を聴いて俺もギターやりたい、じゃなくてまず絵で見てギターを買ってるところが(一同笑)。その時、頭の中で何の音が鳴ってたんだろうね?
井上:最初はホンマ、そうやったんですよ。ギターは(バンドの中で)派手に音を出してるっていうイメージがあって、(南)竜介(=『BECK』でのギタリスト)が弾いてるレスポールの“ギュイーン”って鳴ってる感じ、それやろ!と思ってギターを買ってもらいましたね。
HIROSHI:字面で鳴ってるギターの音を見てそれを鳴らしてみたいっていうところからね。
井上:そうそう、ギターの音が何たるかも全く分かんないですけど(笑)。
HIROSHI:『BECK』を読んでた時には何となく、俺はこういう曲好きだなぁって聴いてた音楽ってあった?
井上:ホンマに僕ね、なかったんですよ。音楽的な物心がついたのが中1の、その『BECK』以降で。車の中でオカンが流す曲とかは聴いてても好きとかハマるとかそういうのはなかったんですよ。『BECK』を読んでから自発的に、好きや〜って思ったのがエルレなんですよね。
HIROSHI:でも、『BECK』通ってギター買って、そこからエルレ聴いてってやっぱオモロいよな(笑)。『BLUE GIANT』(石塚真一著/2023年2月に映画化)読んでからジャズを聴く、みたいな感じでさ。
井上:あぁ、確かに(笑)。でも、そういう(=漫画から音楽に入る)人もいると思いますよ。
HIROSHI:そうだよね、でも俺はそうならなかったからさ。そういう音楽の入り方っていうのはさ、すごく魅かれる。
井上:確かに変な入り方やったなとは今、思います(笑)。でもエルレにハマった理由として、それまで英語の音楽を聴いたことがなかったっていうのがデカかったと思うんですね。“英語の歌を歌ってはるけどこれ、日本人やで!?”“マジでー!?”っていうのが衝撃の始まりやったんですよね。

 HIROSHIさんが音楽に入り込んでいく経緯っていうのはまた全然、別ベクトルですものね、それは誌面でお読みいただくとして。両バンドとも英語、そして日本語も交えて楽曲を生み出していて、英語と日本語の使い分けといったことは誌面に掲載しましたが、そもそも歌詞は具体的にどのように作っていっているのでしょう?
HIROSHI:他のアーティストさんのインタビューを読んだりすると“思いついたことをボイスメモに残したりメモ帳に書いてます”ってあったりするけど、そういうの、やる?
井上:やるようになりました。でも文章では残さないって決めてるんです、単語とか一文だけで。そこから先に例えば自分の頭の中で歌詞みたいなものが5行ぐらい思い浮かんでいたとしても1行だけ残しておくんですよ。で、その後に(時間が経ってから)残りの4行で言いたいことが思い出せないならば、特に伝えたいメッセージではないんやなって判断しますね。
HIROSHI:歌詞に関しては俺もその感じがあるかも。俺は(思い浮かんだ)メロディが覚えられないのがよく分かってるからメロディに関しては諦めているけど(→それをどのように対策しているかは本誌に記載)、歌詞はふと思いついた言葉が思い出せないようなら使わないっていうのはあるかなぁ。
井上:切り捨てがちですよね(笑)。やっぱり、ほぼ使わないですね。
HIROSHI:だからそういうインタビューを読んだ時に“本当に使ってるの?”って思ってて。
井上:たまに、これはっていうのはありますけどホンマにレアですね。メモ帳で作詞してて(作詞自体は)完全に電子でやってるんですけど、メモのところにタイトルだけポンと書いて放置しておいて、さぁ作曲の機会やってなった時に“そういえばこのタイトルの曲を書こうと思ってたな”と思って、バーっと書き始めたりとかしますね。だから文章とか作詞・歌詞というよりかは、タイトルだけ・単語だけみたいなものがメモに残っていることが多いです。HIROSHIくんは?紙に書きます?
HIROSHI:俺は書いたり、書かなかったりする。なるほどね、俺はあまりタイトルからっていうのがなくて、基本的には最後にタイトルを付けるからなぁ。だから(誌面で井上とのやりとりにも触れているAL『Departure : My New Me』収録で)「My New Me」は異例だった。
井上:言いたいことがあったから、それでですもんね。僕らは全部、タイトルからです。
HIROSHI:じゃあさ、それこそ「Masquerade」(2019)とかもタイトルからってこと?それがあって、ラテンのノリっぽい感じになっていくっていう感じなんや?
井上:あの曲に関してはちょっと違って、俺はイントロでアイリッシュ音楽を作りたかったんです。結果としてサビでラテンになったっていうのはあるんですけど、アイリッシュのフィドルとかも使って音を作りたいなから始まって、そのリズムに合うようなタイトルやったりテーマ性を話していたらまず舞踏会ってなって。その舞踏会から、今度は舞踏会の仮面を1回外して向き合わないと、人間の距離って近づかないよね、っていう歌を作ろうってことになって。タイトルを「Masquerade」って決めて、そこからこのタイトルの歌詞を書いていこうって流れで。だから両方ともぼんやりはあるんですよね、書きたい内容と書きたいサウンドっていう。で、サウンドに着手し始めたらすぐか、始める前に先にドキュメント(=歌詞の内容)を、っていう。
HIROSHI:あの曲ってピアノ始まりで曲を作ってるの?
井上:作り始めはアコギです。それでピアノを最後に入れました、俺が(実際に弾くのは)アコギじゃないもんなぁ、って。
HIROSHI:なるほどね〜。最近だと「Grow Old With Me」(2022年)とかは、タイトルからして大切な人と添い遂げていくようなイメージじゃない。それがあって、その物語を描こうと思って、曲を書き出していく感じなの?
井上:そうです、そうです。
HIROSHI:で、ピアノアプローチでやっていくってことなんや。なるほどね、この曲は俺の中で誤解を恐れずに言うと、FIVE NEW OLDとSHE’Sのベン図があるとしたら共通項のところにある曲だなと感じてて。ブラックミュージックっぽい感じのポップスであるところとか。俺、この曲を聴いた時に嬉しくて。仲間がいるなぁって気がすごくしてさ。
井上:あぁ、嬉しい!
HIROSHI:「Chained」(『Amulet』/2021収録)みたいなオーソドックスなギターロックバラードって言うのかな、あぁいう感じとか「If」(同アルバム収録)のミッドテンポな感じとかのSHE’Sも俺は結構好きなんだけど、すごくドンズバに俺らの好きなところを突いてきたなって感じでさ。
井上:分かります、「Grow Old With Me」は共通言語ではありますよね。
HIROSHI:この対談のお話があった時にSHE’S・井上竜馬を思いついたのも、FIVE NEW OLDってパンクでもあるし、いわゆるチルな音楽とも取られるしっていう意味で、逆に言うとあんまり居場所がないのよ、コミュニティっていうか。でもお互いバンドとしてさ、自分らが売れていくためには互いの仲間も必要だなって思ってさ。
井上:いやいや、いっぱいいるでしょ!でも(仲間がいないとしたら)表裏一体じゃないけど、それは強みでもあると思う。どこにでも誰にでも呼んでもらえるっていう。
HIROSHI:うまくいけばブルーオーシャンで、自分たちにしかない場所を確立することが出来るかもしれないけど、竜馬が俺たちの「Nowhere」(『Departure : My New Me』収録)って曲に対して“ウィー・ザ・キングスを感じた”って言ってくれたところとか、仲間のフィールドみたいなのを一緒に作っていけたら良いなっていうのを、何となく思ってるからなんだよね。

【対談後記】
HIROSHIさんが最後にウィー・ザ・キングスを引き合いに出したあたりのお話、そしてそこからまとめに向かうお2人のお話は本誌に掲載しているのでそちらに譲りますが、最後は前向きなお話で2時間近い対談が終了しました。見た目、お2人ともクールそうであまり語らないかも…といった雰囲気にも見えたりするかもですが、自分たちが置かれている環境や日本の音楽シーンにを冷静に見て、自分たちがこの先どのように進んでいくべきかを真剣に考えながら音楽と向き合っている。それをお互いちゃんと自分の言葉で(さらに出身の関西弁で)話す、そんな時間でした。正直ここにもどこにも書けないようなお話も色々と飛び出しつつ(笑)、それは悩みや葛藤が彼らなりにもあり、そして音楽というものが本当に好きだからこそ。序盤こそわたしが合いの手を入れながら進めましたが、時間が経つにつれ2人で顔をしかと見合いながら話が止まらない光景はまさに“対談”でした。数年後、今回のお話を基に、また対談が組めたら面白いなと目論んでいます。“あの時はこう言ってましたね!”とわたしが茶々を入れながら…成長なのか、進化なのか、はたまた、どうなっているのか。FIVE NEW OLDとSHE’S、2組の2023年・その先の未来をとても楽しみにしています!

Edit By CHIE TAKAHASHI Photo by EISUKE ASAOKA

季刊Player2022年Winter号に、撮り下ろしによるHIROSHI(FIVE NEW OLD)×井上竜馬(SHE’S)のスペシャル対談掲載!

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ご注文からお届けまでに一週間程度要しますので、ご了承の上お買い求めくださいPlayer 2022年 季刊Winter号 表紙:吉川晃司 季刊2022年冬号は約6年半振りのオリジナルアルバム『OVER THE 9』をひっさげて、年またぎによる全国ツアーをスタートさせた吉川晃司の表紙、巻頭特集。加藤千絵(CAPS)完全撮...

 

 

 

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