11月11日に全16曲入りのニューAL『Zealot City』をリリースしたa crowd of rebellion。初回限定盤はボーナストラックにメジャーデビューSg「The Crow」収録の3曲をリアレンジ・再レコーディングした音源に加えて、メジャーデビュー以降のMVを17曲収録したDVDもついてボリュームたっぷり。Player 2021年 1月号から続く形でこのインタビューを読んでいただくと、最新アルバム『Zealot City』完成の背景がさらに見えて1曲1曲をより深く聞いていただくことができるだろう。
“狂信者の街”っていう意味は、“人間が、人間という宗教に狂っている”
ー丸山さんが作られた曲を聞いて、ボーカルお二方・宮田さんと小林さんが1曲づつ曲のイメージを決めて歌詞が完成していく、といったお話はPlayer 2021年1月号に掲載していますが、全曲それぞれ違うイメージがある中で、アルバムのタイトルが『Zealot City』となったのは?
宮田大作:“Zealot City”って直訳すると“狂信者の街”で。僕たちは“a crowd of rebellion”という音楽・自分らに狂信的になっている。という部分と…もう一つ、暗い話になってしまうかもしれないんですけど。
ーどうぞどうぞ、構いません!
宮田:(小林)亮輔と、このALを通してどんなことを歌うかっていうのをまず話したんですね。このコロナの中で、結構バンド界隈も何と言うか…もめごとというか、騒動みたいなのはあったりして。世界的にも色々なことがあるし、日本の政治的にも色々あったし。そういう色んなことを亮輔と話してる時に…言いづらいんですけど…人間って人間自体を信じすぎてるなと思ったんですよね。人間を、狂信的に…人間に生まれたら人間が正解になっちゃうじゃないですか、どうしても。人間の世界で生きるし、人間の世界で大人になるし、人間の世界で死ぬし。それが…自分たち的に良いことなのかどうなのかが分からなくなっちゃって。そういう話し合いをとことん亮輔として。人間って悲しいと言うか寂しい生き物なんだよねって。当たり前なんですけど、いつまでたっても人間でいるしかない。どんなに人間が嫌いだろうが何だろうが人間をやめたかろうが、人間に生まれたからには人間でいるしかない…っていうところまで話し合って。だから、“狂信者の街”っていう意味は、“人間が、人間という宗教に狂っている”という、ちょっと重たい内容なんです。
小林亮輔:そう、そういうことなんです。
宮田:それ(=人間でいるしかないということ)が良いことか悪いことかは分からないし、でもそれをそもそも考えたりすることがない。人間に生まれたのだから。学校では“人間は素晴らしい”って教わるし、母親に“あなたは素晴らしい”って言われて人は育つし、人間がピラミッドの上にいるという考え方が当たり前になっている。そもそも“人間が偉いんだ”っていう風に思って生きている人もいないと思うんだけど、でも社会はそうなっている。そんなことをとことん亮輔と話したんです。
小林:全体を通して、この『Zealot City』っていうアルバムが結局、全曲通して歌詞の描写が、何かと何かがくっつく・人と人がくっついているとか物質と物質がくっつきあう、そういう描写が結構多いんですけど、気持ちの部分というか本質的な部分は離れていってるんですよ、全部の曲が本当に。乖離していくというか。簡単に言えば“ハッピーだぜ!”って曲が1曲もないんです。
宮田:世界のことを歌っていたり、恋人のことを歌っていたり、どんなシチュエーションでも離れていってる曲ばっかり。
ー確かに歌詞の部分では、ハッピーな曲は見当たらないかもしれない。でも、アルバム終盤の14曲目「hAngedmAn_A」から3曲続いて、アルバム本編が終わりに向かう楽曲のドラマの作り方は、今後のリベリオンを明るく照らしている感じがすごくしましたけどね。最後を飾る曲「[←REDO.]」は“誰もが心の帆を揺らして 新たな振り出しへと”と歌っていますし。
小林:このアルバムは「Meteor」という曲で始まって「[←REDO.]」(=やり直し)ってタイトルで1曲目に戻るんです、本来なら。今回、初回盤にはボーナストラックが3曲入っているんですけど、「The Crow」っていうSgでメジャーデビューして5年なんですよ。5周年のツアーがこのコロナ禍でどうしてもできなくて、だったら何をするべきかと考えた時に、音として(5年前「The Crow」収録曲を)再録して、今の俺たちの音を聞いてもらった方がいいんじゃないかというアイディアが出て。そこで「[←REDO.]」の最後の歌詞の“新たな振り出しへと”が、ボーナストラックの曲たち・5周年の前の自分たちに行くというルートと、(アルバム本編の)1曲目(「Meteor」)に戻るという、“世界の終わりが始まったそうだ さぁ人間再開”の歌詞に繋がるルートと。
ーう〜ん、なるほどです。やっぱり次に新しく向かっている感が散りばめられている!
宮田:再スタートと言っていいのか、(コロナ禍などの状況は)マイナスだけじゃなくて、もう1回考え直してみたらいいんじゃないっていう感じですかね。盲目的に人間を信じて生きているんじゃなくって、人間とは何なのかというのをもう1回話しあおうって。人間って汚いじゃないですか、という部分をまずは自分らがちゃんと理解すべきだ、まずはそこからだと。見ないようにするんじゃなくて、うん。
ーこうした歌詞へのお2人の密なお話を丸山さんは普段から聞いておられるわけですよね? 正直、どんな思いなんでしょうか?
小林:俺ら、(上記の話をした時の)そのリアクションをちゃんと目にしてるんですよ。(ひときわ大きな声を出して)「えー、すごーい!!」って言いましたね(一同笑)。マスタリングの時ですね。
宮田:「そんなからくりがあったんだ〜」って(笑)。本当、歌詞に関しての色々なことは漠は後で知るって感じで。毎回そうですね。
小林:嬉しかったです、そんなリアクションをもらえたことは。
ーお待たせしました丸山さん、事実でしょうか(笑)?
丸山漠:本当です。“すげー!!!”しかなかったです。
小林:漠くんは作曲でこんだけいい曲を下ろしてくれて、そこに僕らが書いたものに対してのリアクションだから、そこは本当に嬉しい。
ー丸山さんのリアクションが、歌詞に対して一番最初で身近なリスナーの反応とも言えますものね。
丸山:そもそも僕、曲を聞くにあたってどんな曲でもそうなんですけど、歌詞は二の次なタイプの人間なんです。でも2人の書く歌詞は他とはやっぱり違うなぁって思っているんですね。世の中にメッセージ性のない歌詞も多いじゃないですか。でもそういうのとも全然違って、ただ“おぉー!”ってしか言えないんですけど(一同笑)。客観的にそう感じますね。
ー正直、解説を受けることで理解できる歌詞の部分が出てくると思います。
宮田:でも、悩むところですよね。全部説明するとつまらなくなっちゃう気もするし。でも、違う解釈をされてしまうのもなぁっていうのもあるし。
小林:ジレンマだね。
丸山:考える人が考えれば分かる、かな。
ー今回のALの歌詞は、たとえば流行りの人狼ゲームみたいなところからインスパイアされて書いているのかな? とか勝手に思っていたのですが、全然違ったみたいですね。
宮田:(笑)。普段から“人間とは”っていう話とかは、たとえば機材車に乗ってる時でも、俺と亮輔が後ろに座ってずーっとしてますね。
丸山:この2人はしょっちゅうそんな話をしてますね、“人間とは”っていう。「あ〜、またそういう話をしてるわ!」って(笑)。
小林:ちらちら僕らを見ながら「またか、はいはい」みたいな目をしてますね(一同笑)。
ALのリード曲でMVも公開になっている「無罪者」についても、“単語だけ見れば罪の無い者ですが、罪の意識の無い者ということなんです”と宮田が語っていた。それを踏まえて、彼らのMVも見て欲しい。
a crowd of rebellion
Zealot City
ワーナーミュージック 11月11日
WPCL-13239 CD 2,500円(税抜)
Interview CHIE TAKAHASHI / Photo by KAZUTAKA KITAMURA
Player 2021年1月号https://player.buyshop.jp/items/36679376