我らがギター番長こと白井良明が、プロミュージシャンとしての活動50周年を迎えた。近年はツインドラム編成のfor instanceで最新形ジャズ、ポストロックを追究してきている良明さんだが、2022年はまさかのムーンライダーズのニューアルバム『it’s the moooonriders』もリリース。ギターミュージックの最前線を歩み続け、それこそ自身の音楽追究としてfor instanceにたどり着いたギタリストであり、ムーンライダーズも復活という意味ではもっとも理想的な活動スタンスに至っていると言えるかもしれない。8月5日(金)には浅草公会堂にて白井良明プロ生活50周年&ムーンライダーズ加入45周年記念公演「50年、それがどうしたぃ!」開催決定。梅津和時、仙波清彦とfor instanceのセッション、 moonriders、鈴木茂、ROLLY、松尾清憲のゲスト出演も決定している。ここでは駆け足で良明さんのギタープレイを振り返ってみよう。
時に現存するバンドでは日本最古とも称されるムーンライダーズ。時期により音楽性も激変するバンドですが「Beep Beep Be オーライ」は70年代後半、フュージョン/プログレ期の名曲で、故・かしぶち哲郎作詞作曲。これは2011年のライブ映像ですがわりと原曲に準じたアレンジで全員のソロプレイの観どころ満載!
これも2011年のライブ映像より。ムーンライダーズ70年代後半中期はクロスオーバー・プログレ的なテクニカルなプレイで魅了した白井良明だが、80年代ニューウェーヴ期に近くなってくると、アバンギャルドなギタープレイが炸裂!『カメラ=万年筆』収録の自身の作詞作曲によるこの曲ではなんと歌詞も暗号なのでした。確か実際に暗号博物館かなんかに足を運んで歌詞を書いたんじゃなかったかな?
ニューウェイブ末期のムーンライダーズにファンキーのダンスビートやテクニカルハードなギタープレイを持ち込んだのも白井良明ギター番長。スーパームーンライダーズによる「Don’t Trust Anyone Over 30 」も原曲は良明さんで、CMに書いた楽曲を元にリアレンジされたものと聞く。作曲=E.D MORRISON名義ですが、これはMOONRIDERSのアナグラムです。他にもROOM DINERSとか言葉遊びをやっていた時期。ギタープレイのカメラワークはなぜか博文さん狙いがほとんどなのですが笑、ギターソロなどは良明さんにフォーカスが当たっています。スーパームーンライダーズはメンバーが超豪華! YouTubeでご覧ください。
白井良明プロデュースで当時衝撃的だったのが、鈴木さえ子らとのバンドCINEMA(鈴木慶一プロデュース)を経ての、松尾清憲のソロデビューシングル「愛しのロージー」。なんだこのブライアン・メイばりのギターサウンドは!?と話題になったのでした。今聴いても凄い!松尾さんも大江千里さんらとともに早すぎるメガネのポップヒーローでした。松尾さんも浅草公会堂のゲストで出演されますね。
松尾清憲のギターサウンドに衝撃を受けたのがRollyであり、すかんちのメジャーデビューをプロデュースしたのも白井良明。まさに松尾清憲プロデュース手法をバンドに発展させたのもすかんちの一部分でした。元気いっぱいのデビュー当時のステージング。故・ドクター田中のコーラスも痛快。歌ってベース弾きまくれるShima-Changって女性ベーシストブームの先陣を切った存在かもしれません。8月の良明さんの浅草公会堂記念公演でRollyさんとの共演が叶う!
ちょこっと脱線。小泉今日子さん「優しい雨」冒頭ってロングサステインのギターサウンドが印象的ですがこれも白井良明さんの名仕事! このテイストがムーンライダーズの『AOR』に収録されている「幸せの洪水の前に」で引用されていますね。なお、「優しい雨」は鈴木祥子さんのコーラスワークも素晴らしい!!!
松田聖子「ガラスの林檎」はご存知細野晴臣さんのプロデュース。おそらくギタリストは複数参加しているようですが、中でもトリッキーなギターオーケストレーション部分を担っているのも白井良明さんです。これも「愛しのロージー」とともに結構衝撃的でした。80年代の良明さんは沢田研二のアレンジなども手掛けていたり、ニューウェーヴィなギタープレイで脚光を浴びていました。
1987年に活動休止したムーンライダーズは91年に復活!活動再開にあたり“ギターを思いっきり弾ける”条件を突きつけたという良明さんですが笑、ハードなギターサウンドとハウスミュージックを加味したバンドサウンドでド肝を抜きました。良明さん作曲による「Who’s gonna die first?」は、特にヘヴィでテクニカルなギタープレイ満載で、以後はライブの代表曲に! この辺からギブソン弾きのイメージが強くなっていきます。
2011年ムーンライダーズ活動休止後、自身のルーツであるジャズに回帰、ちょうどジュリアン・ラージを筆頭にジャズシーンの新たなギターヒーローが台頭して“今ジャズ”が脚光を浴びた時期。国内の猛者も誘い込んでの「face to guitars」でそれまでにないソロの世界観を示してくれた白井良明でした!
ルーパーも駆使してソロパフォーマンスを確立した白井良明。ライブ収録、ライブドローイング、さらに360度ファンに囲まれる形でプレイされた一部が、ライダーズナンバーの続編「please trust over 60」。この音は同期ではなく、ルーパーによる完全生演奏です。
そして白井良明さんが満を侍してオータコージ、柏倉隆史のダブルds、雲丹亀卓人(b)、コイチ(key)で結成したfor instance。ワールドワイドな最新ジャズ、ポストロックシーンに向け放たれた衝撃のバンドサウンド。圧倒的熱量ながらメロディアス!
白井良明ギター番長擁するfor instanceの2020年11月のGrapefruitMoon公演ダイジェストがアップされていますが、これを観るとライブバンドfor instanceの真価がわかってもらえるかと。オータさんの病状が気になるが、さらにこれを超える演奏が8月の浅草公会堂で観られるはず!
白井良明プロ生活50周年&ムーンライダーズ加入45周年記念公演
「50年、それがどうしたぃ!」
2022年8月5日(金)18:00/18:30 東京・浅草公会堂
出演:白井良明
ゲスト:梅津和時、鈴木茂、仙波清彦、for instance [白井良明(g)/オータコージ(ds)/柏倉隆史(ds)/雲丹亀卓人(b)/コイチ(key)]、moonriders、ROLLY
チケット価格(税込み/全席指定): 松:18,000円(リハーサル見学・お土産付き) /竹:8,800円 /梅:5,000円
Player SPECIAL July Issue -ニッポンのクロスオーバーでは22,000字で掘り下げた白井良明の超ロングインタビュー掲載! ムーンライダーズがきっかけでこの仕事を始めた編集長入魂のギター番長ヒストリーインタビュー。コアファンほどお楽しみいただけるかと思います!