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SAKAE OSAKA HERITAGE Evolved / Mimori(fleufleu)試奏レポート

長年に渡って培ったドラム製作のノウハウと、時代ごとのサウンドを取り入れた柔軟な製作理念を継承したSAKAE OSAKA HERITAGE。この新生SAKAEからスタンダード・モデルであるドラム・セット「Evolved」がついに発売される。

ここからは気鋭のガールズバンド fleufleuのドラマー MimoriによるSAKAE OSAKA HERITAGE Evolvedのインプレッションをお届けしよう。彼女が現在メインで愛用しているスネアドラムが、SAKAE Drums期に製造されていたブビンガ・シェルでやや小さな口径で胴厚の13″×7″のモデル。

ロックやポップスなど幅広いジャンルを網羅するfleufleuにおいて、バンド・アンサンブルを大事にしつつも個性的なサウンドやプレイを心掛けているというMimoriにSAKAEドラムとEvolvedの印象について語ってもらった。

Evolvedは音のニュアンスも掴みやすくて、自分が出したい音が自然に鳴ってくれる

Mimori(fleufleu)

ーMimoriさんはバンド・アンサンブルの中で、どんなドラムの音が理想的だと思いますか?

Mimori:バンド全体で各メンバーの音がバランス良く出ているのは大前提として、ドラムが安定的に下を支えつつ、セットの音も埋もれずにくっきり出てるのがいいと思います。個人的には自己主張したいタイプなので、個性的な音やちょっと変わった音なんかも上手くサウンドに馴染ませられたら理想的かなって思います。低音から高音まで輪郭はくっきりしてるけど、温かみも残ってるみたいな音が私は好きです。

ーMimoriさんがSAKAEのスネアを使うようになったきっかけはUVERworldのドラマーの真太郎さんからの影響だったそうですが?

Mimori:そうですね、UVERworldが好きで、真太郎さんがどんな機材を使っているのかを調べたらSAKAEの名前が出てきて、気になりだして(笑)。ちょうどその頃、新しいスネアを探していたんですが、SAKAEのブビンガ・シェルも試してみたいと思ったことがきっかけというか始まりですね。

ーそれはいつ頃のことですか?

Mimori:もっと前からSAKAEは知っていたんですけど、実際にSAKAEのスネアを購入したのは3、4年前くらいです。当時、ヤマハのメイプル・シェルのスネアをメインに使っていたんですけど、それとはちょっとキャラクターの違うスネアが欲しいなと思ってSAKAEを購入しました。そのヤマハは高校生の時から使ってたんですけど、fleufleuでまたバンド活動が活発になって自分の個性も出したいという思いと、SAKAEを使っている真太郎さんがカッコよくて、ちょっとそれに寄せてみようかなっていう(笑)。

ーSAKAEの前に使っていたスネアがロック寄りの音だったと仰っていましたが、具体的にどんな音だったんですか?

Mimori:ヤマハと並行してアヘッドのスネアも使っていたんですけど、それがスチール・シェルで、ヤマハのメイプルと比べて“カンカーン”って良く抜けるんです。fleufleuはロックな曲が結構あって良く馴染むんですが、割とポップな曲もあって、もちろんそれはそれとして成り立つんですけど、他のバンドのサポートもやるようになって、もうちょっと“この音”っていうのが分かりやすく出せるスネアがあったらいいなとSAKAEを候補に考えてました。

ー現在メインで使用しているSAKAE Drumsのブビンガ・シェルでやや胴厚の13″×7″サイズを選んだ理由は?

Mimori:ロックやポップスにもオールラウンドに対応できるスネアが欲しくて楽器店の店員さんに相談したら、ブビンガは木材だけど重くて硬い素材なので真っ直ぐ芯の通った結構ロックな音も出せるよって教えてもらって。サイズも13”ならそんなにうるさすぎなくていいってことだったので、実際に叩いてみたんですけど、木の温かみも残っているし、内巻きフープっていうのも結構気になるし、リムがちょっと可愛いかったこともあって(笑)これに決めました。

ー実際に使ってみて、fleufleuの音楽スタイルとSAKAEのブビンガ・シェルのマッチングはいかがでしたか?

Mimori:fleufleuはロックな曲からポップな曲までスタイルの幅が広いんですが、それに対応できるという意味でマッチしてると思います。チューニング次第で変化も付けられますし。fleufleuは個々のメンバーそれぞれの持ち味が出ていて、自分も好きなサウンドを主張したいというか、私のサウンドっていう意味でSAKAEのブビンガがいいなって思いました。

ーブビンガ・シェルのSAKAEは割と個性のあるサウンドなんですか?

Mimori:例えば王道のスネアの音に比べて、それよりも少し個性が立っていて“あ、何かこれちょっと違う音だな”っていう感じだと思うんですよね。ある意味、個性はあるけど出過ぎないというか、よく聞くと特徴あるんだけど、ちゃんと馴染みのあるスネアの音が出ているって感じですかね。

ー以前、本誌のインタビューで、胴厚のスネアは鳴らしきることが必要と仰っていましたが、叩き方にコツがいるんでしょうか?

Mimori:そうですね、その頃はスティックの持ち方とかを研究していた時で、スティックを投げるように鳴らしきるみたいな練習をしていました。ちゃんとヒットすると“スカーン”っていう感じの音がして気持ちいいです。

ーでは、Evolvedを演奏してみた印象はいかがですか?

Mimori:まとまりのあるサウンドっていうのが第一印象です。やっぱり内巻きフープ(※同社では外巻きフープもラインナップ)で倍音が散らからなくて聞きやすいっていうのがSAKAEの特徴かなって思います。タムもフロアもバスドラも音が鮮明に見える感じで分かりやすくて、叩いていてすごく気持ちがいいです。個性的というよりも、シンプルに出るべき音がちゃんと鳴っているって感じですかね。

ーEvolvedはどんなサウンド・キャラクターだと感じましたか?

Mimori:タムの音がバランス良く出てる感じがすごくします。下の音もちゃんとはっきりしている気がしました。サステインも散らばらずに特定の音域が点に向かってまっすぐ抜けるというか、綺麗に伸びてるって感じがました。鳴っている音が自分でもちゃんと分かるし、バンド・メンバーにも“自分は今こんなプレイをやってますよ”っていうのが伝わりやすいんじゃないかなと思います。

ーSAKAEのスネアはリムショットの音も気に入っているそうですが、新しいメイプル・スネアのサウンドはいかがでしたか?

Mimori:今回、新しいスネアも色々と試させていただいたんですけど、やっぱり音が散らかっていないというか、縦の方向の抜けが良くてリムの音がちゃんと出てる感じがしました。いらない音が削ぎ落とされて必要な音だけが出てるっていう感じがして私はすごく好きです。

今回試奏したスネアドラム。左からSD1465MA 14″×6.5″、SD1455MA 14″×5.5″、SD1365MA 13″×6.5″。一番右はMimoriが愛用しているSAKAE Drums期のブビンガ・シェル 13″×7”

ー14″×6.5″、14″×5.5″13″×6.5”とサイズの異なるスネアを叩いていただきましたが、サイズごとの音や鳴りの違いは感じましたか?

Mimori:13″はふだん使っているので分かりやすいんですけど、やっぱり他と比べて小さい分、高音が抜けるっていう感じでした。14インチで胴厚が深くなるとしっかり下の音も鳴るので、ドラム・セット全体の音に広がりが出ている感じがしますね。

ーバスドラ、フロアタム、タムタムの音の印象はいかがでしたか?

Mimori:それぞれシェルの厚さを変えているということで、個々の鳴り方が違っていて、それぞれが独立した楽器という感じがしました。フロアタムはフロアタムとして鳴っているんですけど、ドラム・セット全体で合わせた時にすごくバランスが良いのが不思議でしたね。ちゃんとまとまりが出来てて、絶妙なバランスを考えて作られてるんだなぁって感じました。

ーメイプル・シェルのドラムには一般的にどんな特徴があると思いますか?

Mimori:やっぱりメイプルには“暖かい”っていうイメージがありますね。私のイメージですが、ドラム・セットになると“包み込む”みたいな、歌ものにも柔軟に対応できる馴染みがいいイメージがありますね。ただ、Evolvedはロックにもちゃんと応えてくれるというか、むしろそれもうまくいい音にまとめてくれる感じがしました。

ーEvolvedは割とジャンルを選ばずに使えそうですか?

Mimori:それはすごく思いました。むしろいろんなジャンルで使ってみたいというか、Evolvedのドラム・セットならどんなサウンドにも応えられるんじゃないかなって思いました。

ーチューニングでの音の調整のしやすさはいかがでしたか?

Mimori:今回はスネアのみチューニングしてみましたが、(今回試奏したのは)内巻きフープっていうのもあって、音程が掴みやすいので調節しやすいって思います。ふだん使っているブビンガ・シェルのスネアもその場面に合わせてチューニングを変えたり、個性を出せるようにしてます。

ー最後にEvolvedはどんなドラマーにオススメしたいですか?

Mimori:バンド・サウンドでの音の馴染みが絶対的に良いと思うので、アンサンブルを大事にしている人や要所要所でのドラムの立ち位置にこだわる人にオススメしたいです。不思議とドラム、シンバルそれぞれの音が綺麗に聞こえて、セット全体がバランス良く聞こえるので、楽器本来の音を大切にしている人に是非試して欲しいです。あと、音にまとまりがあって鳴らしやすいので、一通りドラムをやってきた人がまた立ち戻ったり、始めたばかりの人にも他と聞き比べて欲しいなと思います。もちろん鳴らし方によって音も全然変えることも出来るし、素直なドラム・セットの音も出せるので幅広く使えるイメージがあります。
ドラム・セット全体を綺麗に鳴らすのはやはり難しいのですか?
難しいと思います(笑)。すごく上手な方や大御所ドラマーの方々はやっぱり鳴らす音が全然違うって感じますね。タッチとか、その人のスタイルに合ったセットとか、音の相性とか、いろんな要素が絡んでるとは思うんですが、Evolvedは音のニュアンスも掴みやすくて、自分が出したい音が自然に鳴ってくれる感じがするので、キャリアが長い人だったら無限に表情が出せると思います。

Interview by TOSHIHIRO KAKUTA

(※本記事は月刊Player 2021年4月号から再編集して転載しています。)

fleufleu Official Web Site https://fleu2.net

製品のお問い合わせ先:株式会社コルグお客様相談窓口
TEL:0570-666-569
https://sakae-drums.com/jp/

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