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Blackstar ID:CORE V3 試奏レポート / Masahiro “Godspeed” Aoki

Blackstar ID:CORE V3 アンプ・シミュレーターとかDTMに慣れてない人が、 難しいことを考えずに楽しめるアンプ

Blackstar ID:CORE V3 STEREO 10

ギタリスト/コンポーザー/エンジニア、さらに音楽レーベル<ViViX>代表として、G.O.D. GUITARISTS ON DEMANDなどのプロジェクトでギターインストゥルメンタルの未来を創造しているMasahiro “Godspeed” Aoki。アンプを始め、様々なレコーディング機器を使いこなしてきた彼にブラックスター ID:CORE V3を試奏してもらい、その印象について伺った。

コレは演奏動画を撮る時にすごい役に立つんじゃないかなって思います

Masahiro “Godspeed” Aoki

ー現在、ギターのレコーディングではどんなシステムを使用していますか?

僕の場合は、エレキはクアッド・コーテックスかケンパーでのライン録り1本、もしくはボグナーかEVHをユニバーサルオーディオ オックスに繋いでライン録りのどちらかですね。なので、ラインが基本です。

ーブラックスターのアンプを使ったことはありますか?

自分で持って使ったことはなくて、楽器店で50ワットぐらいのアンプを試奏したことがあるくらいですね。相当昔なんですけど、ISFのノブはあったので面白いアンプだなって思いました。当時、ブラックスターっていうブランドがまだ日本であまり知れ渡ってなくて、どちらかというとチューブが入った歪みのペダル(HTペダル)の方が人気があった時期でした。

ーID:CORE V3を使ってみて、まずVOICEのサウンドはいかがでしたか?

必要なものをちゃんと分かって厳選して6つにしてるって感じですね。クリーンにしても、ウォームな音とブライトな音が欲しいのは、多分ギタリスト共通の想いでしょうし、クランチだけでも2段階でゲインがありますし。このサイズのアンプって、クリーンが1個、クランチが1個、歪みが6個みたいなことになったりもする印象があるんですけど、そこら辺は歪み(OD)のミッド・ブーストが有る無しの2つで、そのキャラクターをISFで変えるという形で解決してるので、すごいシンプルでいいなって思います。

ーISF(ブリティッシュ・アンプからアメリカン・アンプのキャラクターをコントロールするブラックスター独自のコントロール)の効き具合はいかがでしたか?

こっちに回すとブリティッシュ、その反対だとアメリカンってなってるんですけど、確かに同じ回路でパワーの回路が変わるようなニュアンスというか、音の重心の場所だったり出方とかが変わってきます。これは無段階でいじれるんですが、どこに行っても間違えることがないのがありがたいところで、どこまで回しても回し過ぎみたいなことがないですね。

ーブリティッシュとアメリカンのサウンド・キャラクターの違いというと?

僕の個人的な所感としては、ブリティッシュはEL34とかのモサっとした感じが出て、アメリカンにすると6L6的なちゃんとフラットに上まで“ビーン”と出る感じになる気がします。なので、繋ぐギターによって必要なトーンだったり音のキャラクターって違ってくると思うんですけど、そこをISFがだいぶ吸収してくれるっていう感じはします。

ーエフェクトのサウンドや使い勝手はいかがでしたか?

ステレオ・スピーカーが入ってるおかげで、モジュレーション系のステレオが活きるってことはすごい感じました。ただアンプ本体ではそこまで細かくいじるのは難しくて、回し切ったところで急に次のアルゴリズムに切り替わっちゃったりするので、あると楽しいというレベルのことがアンプ本体で出来て、ちゃんと使おうと思ったらUSBで繋いでPC側で、と使い方が分かれてる印象でしたね。PCでArchitectソフトウェアを使えば、結構細かいところまでエフェクトのミックスやパラメーターまでいじれるので、普通に使えるレベルのエフェクトですごい良く出来てるなって思います。

Architectソフトウェア画面

ー本格的なレコーディングでも対応できそうですか?

レコーディングで使うのであれば、僕はUSBでPCに繋ぐか、Cab Rig Liteのアウトを使う方がいいかなって思います。

ーLine In / Streamingのインプットがこのアンプの特徴なんですが、他のアンプではこういう機能はあまりないですよね?

AUXインはあってラインアウトもあるんですけど、1本のケーブルで行って帰ってっていうのは多分他にはないですし、すごく面白いですね。TRRSケーブルを使うこと自体も相当珍しいと思います。要はストリーミング・モードでYouTubeやインスタグラムとかですぐストリーミング出来るんですけど、それだとマイクの声を拾わなくなっちゃってラインのギターの音しか飛ばなくなるので、どっちかって言うとコレは演奏動画を撮る時にすごい役に立つんじゃないかなって思います。
普段からDAWとオーディオインターフェースがある状態でレコーディングしている人であれば、映像と音を別撮りすることは自然に出来ると思うんですけど、そんなにDTM関連に慣れていない人がアンプとギターだけで演奏動画を撮るってなったら、どうしてもカメラのマイクで生録りになりがちだと思うんですね。そういうことを特に深く考えずにスマホからオケを流しながら、アンプで処理した音と混ざった状態で録画が出来るのは多分他にないフィーチャーなので、そういうところも含めて僕はアンプ・シミュレーターとかDTMに慣れてない人が、難しいことを考えずに楽しめるアンプだと思います。

ー特にスピーカーキャビネットシミュレーターがすごく優れているという感想をお持ちになったそうですが?

9種類のキャビネットに対して、マイク3本のバリエーションがあるので、最初は多分IR(インパルス・レスポンス)を収録して切り替えてるのかなって思ってたんです。でもそうではなくて、ちゃんとDSPでアルゴリズムでモデリングしたキャビネットの音なんだよって資料では書いてあって、最近それを真面目にやってるところって少ない印象があるんです。それってうまくいけばすごい良い音になるんですけど、うまくいかなかったらすごい変な音になるんで、結構作ってるメーカーの技術力がモロに出るんです。
このCab Rig Liteのシミュレーションはすごくちゃんと作ってる印象があって。このアンプ(ID:CORE V3 STEREO 10)は定価で税込18,700円じゃないですか。オマケ的って言ったら何ですけど、その価格のアンプに付いてるキャビネットシミュレーターのクオリティじゃないなって感じがします。

ーキャビネットのタイプもそれなりに揃ってるし、マイクの種類と位置も選べますし。

そうですね、オンアクシスとオフアクシスが選べて、それがちゃんと“っぽかった”ので。

ーAokiさんはスピーカーキャビネットシミュレーターには特にどんなところにこだわりますか?

抽象的なことを言うと、スピーカーユニットが空気を揺らしてる感がちゃんと録れてるのかどうかが僕はすごく大事だなって思っていて。究極的には何に近づけていけばいいかっていうのは、キャビネットの前にマイクを立ててレコーディングした音にどれだけ近いかっていうところを、僕は一つの指標にするんです。そういった意味合いで、割と今の世代の音というか、ちょっと昔のガッカリするような音では全くないですね。

ー昔のスピーカーキャビネットシミュレーターは空気感をうまく再現できていないものも多かったですか?

そうですね。ペラっとした感じで、いわゆるデジタルな音っていう言葉で良い意味でも悪い意味でも表現されて、シンセとの混ざり具合がいいとかいう文脈で語れるものがあったと思うんです。今だとそれこそフラクタル(オーディオシステム)とか、(Line 6)Helixだったりとか、いわゆるハイエンドのアンプシミュレーターっていっぱいあるんですけど、Cab Rig Liteはそういうところと並べた時に、あからさまに見劣りするようなものではないです。「あれ、今コレの音?」みたいな感じだったんで、良い意味で裏切られたところはあります。

本当に良いバランス感覚のプロダクトだと思います

ーマイクが3タイプから選べますが、その再現性はいかがでしたか?

ダイナミック、コンデンサー、リボンとあったので、おそらくメーカーがイメージしてるのはあのモデルだろうな、このモデルだろうなっていうのは想像しながら弾いて、実際そういう感じの音の変わり方をしたので。結構ハイエンドなシミュレーターって、マイクのモデル名まで書いたりするじゃないですか。でもそれって、おそらくこのアンプを買うユーザーにとって優しくないと思うんですよね。シュア SM57があってゼンハイザー MD421があってって言われてもそのマイクを知らなければどう変わるか予想できないと思うんですよ。
そうじゃなくて、ダイナミックはダイナミックで、コンデンサーはコンデンサー、リボンはリボンだよっていうところまで選択肢を絞ってくれてるのが、デザインとしてすごくいいなって思いますね。実際にその3種類のマイクを立て分けたら、そういう音の変わり方をするよねっていうことがちゃんと感じられる形で仕上げられてる印象でした。

ーこの3タイプのマイクは、一般的にそれぞれどんな特性があるのでしょうか?

ダイナミックだとSM57に代表される“ゴリッ”としたロックな感じの音で、ああいうマイクってすごく頑丈で大きい音を入れても大丈夫なので、キャビネットにベタ付けしたりもします。割と周波数特性としては真ん中に寄るようになるので、ローが足りなかったりするんですけど、マイクを近づけることで近接効果で補って、実際にキャビから聴こえてる音とはちょっと違ったフィールの音にはなるんですけど、それがカッコいいみたいな、割と脚色の強いマイクかなって思います。

ーコンデンサーマイクの特性は?

コンデンサーマイクの場合だと、もうちょっと高い感度で耳に聴こえてる感じで録るみたいな。オーケストラを録る時って基本的にコンデンサーマイクだったりするんです。そういう感じで、僕はあんまりベタ付けしないでちょっと離して録る方が好きなんです。コンデンサーだと、20kHzを超えてもスーッと周波数特性が上の方に伸びてるようなマイクもあるので、ローエンドからトップエンドまでしっかりと全部拾いきれるっていうのがコンデンサーマイクですね。

ー最後にリボンマイクは?

さっきのコンデンサーの説明と近いんですけど、リボンは耳に聴こえてる感じのフィーリングをちゃんとそのまま録れるマイクで、リボンエレメントっていうのが揺れることによって電位差が発生するっていうマイクなんです。あんまりハイが伸びてないというか、緩やかにロールオフしていくんですよ。それが音楽的にすごく耳に心地良い感じに聴こえてきて、僕はそれをすごく真実味があると感じています。キャビネットの前に立てるのがすごい好きで、僕のメインマイクもロイヤーのリボンマイクなんです。あんまり脚色して派手に聴かせたいようなジャンルで使う人は少ないんですけど、例えばライブハウスとかでステージに置いてあるギター・アンプから音が鳴っているように感じる、そういった生々しさが録れるのがリボンマイクですね。

ーCab Rig Liteでは3タイプの定番マイクの特性をしっかり再現していますか?

そうですね。ダイナミックといったらこうだよねみたいな、割とギタリストが思うステレオタイプ的なキャラが違和感なく、本当にマイクを立てたっぽい感じでちゃんと出るのですごいなと思います。

ーその他、気になった特徴はありますか?

コレが誰にとって嬉しいアンプなのかなっていうことをずっと考えていたんですけど、やっぱり去年ってみんな家にいる時間がすごく増えて、それでギターを始める方とか、もしくはギターに戻ってこられる方もきっと多かったと思うんですよ。そういう方が最初に触るアンプっていうのを考えた時に、僕みたいな音楽制作を生業とする立場からすると、DAWとかオーディオインターフェースやデジタル・プロセッサーも熟知してるから、「これとこれを使いこなして組み合わせたら、一番少ないコストで一番良い音が出る」っていうのはすぐ分かるんです。でもそうじゃない人って、やっぱりシンプルなものから始めた方が絶対に続くと思うんですよね。そう考えた時にこうして“ギターアンプの見た目”をしてることって、僕は意外と大事だと思ってて。やっぱりアンプを買う時に、最初の一台としてオーディオインターフェースという選択肢は中々思い浮かばないじゃないですか。そういうことを考えた時に、こういうものがすごく必要だなって僕は思っているんです。
小型アンプでも、例えば真空管とか整流管、バイアス電圧が選べるようなものの場合、買ってもすぐには使い方が分からないじゃないですか、初心者だと特に。かと言って他の小型アンプだと値段がちょっと高かったり、ラインアウトがここまでクオリティが良いわけでもなかったり、もうちょっと下のクラスまで行くと、今度はそもそもエフェクトもシミュレーターもなくてもっとシンプルなものになっちゃうので。そう考えた時に、価格と機能のバランスがものすごく良いと思います。
しかもコレの何が嬉しいって、オーディオインターフェースになるじゃないですか。だから初心者がエレキギターを始める時の入口としてはすごくシンプルで、ギターアンプとしてコントロールもすごく簡単にいじれるんだけども、慣れてきて物足りないなと思った時に、次のアンプを買わなくてもコレでその先まで行けるんですよね。そういう意味で僕は最初に買うアンプとして、一番良いアンプが出たなっていう印象を持っています。
例えば、USBケーブルを繋げたらベース/ミッド/トレブルがいじれてレゾナンスも触れるんですけど、アンプ本体ではそこには触れなくてもいいよねっていう風になってるのが、うまいことやってるなって思います(笑)。だから買ってきて初めてギターを繋いで弾いた時にはコントロールをどういじってもそれなりに良い音が出るようになっているのが、本当に入り口として優しいアンプだなと思いました。あと、めちゃくちゃ軽いですしね。
小型アンプながら、かなり進化していますしね。
このアンプの中にアナログの回路が入ってるかデジタルの回路が入ってるかってことは、ある程度続けた人じゃないと興味ないと思うんですよ。で、この中身はほぼデジタルだと思うんですけど、見た目はアナログなのも良いと思います。昔あった製品でいかにもデジタル・アンプ風の見た目しちゃってるとエフェクターの延長線上みたいに見られがちなんですけど、コレって割と他のブラックスター・アンプとも見た目が近いじゃないですか。そういう意味でもちょっとワクワク感もありつつ(笑)。

ーデザインも重要ですよね。

そうやって考えると、本当に良いバランス感覚のプロダクトだと思います。キャビネットもすごく評判がいいんですよね、ブラックスターって。知り合いがブラックスターの4×12のキャビネットを使ってて、すごくバランスの良い音をしてたのでちょっと意外だったんです。すごい良いキャビネットなんだなって。

ーやっぱりアンプという形のものから音が出るっていうのは大事ですよね。

そうなんですよ。PCを起動してオーディオインターフェースに繋いでDAWを起動しないと音が出ないっていう環境って、きっと練習が続かないと思うんですよね。これは繋いでポチッとすれば音が出るから、そこがすごくいいなって。しかも別売の電池を買えば、バッテリー駆動するんですよね。本当にすごい良いですよ、これは。僕にとって必要な機材のリストっていうのはすでに固まってるんですけど、やっぱり新しくギターを始める人が増えて欲しいっていう願いは常にあるので、そういう人が身の回りに現れた時に、「じゃあ、これ買いなよ」って言えるリストみたいなものを頭の中に用意しておきたいんです。そう考えた時に、コレはすごく薦めやすいアンプだなって思いました。

Interview & Photo by TOSHIHIRO KAKUTA

※本記事は月刊Player 2021年11月号特集を再編集したものです。

製品問い合わせ:株式会社コルグお客様相談窓口
☎︎0570-666-569
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