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黒木渚&日食なつこ対談「キラキラせずに付き合えるから私たち多分、友達なんですよ」

   「Player SPECIAL July Issue -ニッポンのクロスオーバー-」(7/5発売)に掲載された
黒木渚日食なつこ対談。もともと旧知の仲というのは知っていたのですが、
昨年秋に発売の「Player SPECIAL Summer Issue -Women-魅惑のMuse」にそれぞれ登場し
インタビューで語っておられた多くの“点”が、今回の対談を通して“線”になったと個人的には思っています。
では早速、日食なつこが拠点を変えたというストーリーの続きから、本誌未掲載のお話をどうぞ!

日食:渚さんは、最終的な終の住処、的な目的地はどこにあるの?

黒木:まだ決まってない。最近はオーストラリアもすごく気になってるんだけど(笑)、私が、定住に向いてないんじゃないか説があるから旅した方が良いんじゃないか説、が。

日食:葛飾北斎が人生で80回引っ越した、とか聞くけど。渚さんも動き続けるタイプかも。そもそも多分、定住できるタイプだったらまずこういう仕事をしてない。聞いてみたかったことがあるんだけど、地元というものが渚さんの中にどんな立ち位置であるのかな?って。宮崎出身じゃない、宮崎には帰れてる?

黒木:今年の夏に、2年ぶりに帰る!

日食:私、宮崎出身の人にすごく縁があって。今お世話になってる、大分ぶっ飛んでるPAさんも宮崎の人だし。中学の時から打ち込み音楽を自分のHPに上げ続けてる女の人がいて、その人が神話を元にした曲を大量に作っていて。なぜ神話ばっかり元にしてるんだろうと思ったらその人も宮崎出身で。宮崎って神話の国って言うじゃない? だから宮崎で生まれた人っていうのはどういう人たちなんだろうって思ったり、渚さんもやっぱりいつかは帰りたい場所ではあるのかな?

黒木:宮崎県民は基本的に宮崎のこと大好きだよ。ほぼネジ飛びなんだけど(笑)。っていうのは気候と性格、音楽性ってくっついてるじゃん。宮崎県民は、女がしっかりして強くなるっていう感じかなぁ。最後の最後でどうにかなる、って思ってるところがあるけど、それが東北とかだったら仮に仕事がなくて家がなくなっちゃったら死んじゃうじゃない? そういう危機感がないんだよね、南国は(笑)。

日食:風任せ、みたいな。なるほどね、今すごく納得した。宮崎に色々と縁があるから、2018年に1人旅をしたんだよ、その時に渚さんに教えてもらった美味しいステーキ屋さんにも1人で行ったりしてさ、3日ぐらい旅をしたけど穏やかな気候で人柄もほわんとしてて、そういう所である程度の感性を培ってから大都会・東京に出て来て音楽を10年続けて、っていう。そのギャップで自分がどこか分離したり乖離したり、みたいなことってなかったのかなぁと思って。

黒木:あるある、ある。しかも私は宮崎県勢の中でも特殊で、異常に厳しい学校に6年間いたから、そのゆるさを味わってない。宮崎って遅刻する人も多いんだけど私は遅刻をあんまりしないタイプだったりとか、県民らしからぬせっかちなところがあって。それは6年間、調教されまくりな厳しい学校の中で生きたからで。それがミュージシャンになって解き放たれたから、今やっと不良になってわーい!みたいな感じで。昔は不良が音楽をやってロックンロールでカッコいい、みたいな感じだったのが、不良の魂だけは持っててやっと発揮できてそれを音楽に使ってみよう、みたいにちょっと逆説的な不良、みたいな感じで(笑)。

日食:すごく出自が特殊なんだね。

黒木:私、今でも夢で高校生で、絶対に授業に間に合わないとかプリントをやってないとか、靴下が片方ないとか体操着が乾いてないっていう夢を見る、今も囚われてるんだなぁと思う(笑)。

日食:トラウマになるぐらい厳格な所だったんだ、へー!

黒木:その、優等生のペルソナみたいなものに抗って抗って、黒木渚を作ってる、みたいな。日食殿はどんな子だったん?

日食:そんなの聞かされたら言えないぐらいの、本当に普通。ザ・公立、公立、国立大学に一瞬入って1ヶ月で行かなくなって、で、確実に集団というものが駄目で。だから渚さんが6年いた寮とかにもし私が入ってたら本当にもう、駄目だっただろうなと。

黒木:しんどかったよ、でも13歳で放り込まれてそこしか知らないからそういうものだと思ってた。世界の全てがその女子寮だったから。だから他の世界を知った上で、例えば大学から寮に入る、とかだったら絶対に逃げ出してたね。ガラスをバリーンって割って(一同笑)。日食殿は、音楽いつからやってるの?

日食:小3からピアノをやって、曲を書き出したのが小5~6かな。

黒木:早っ!!

日食:音楽は自然と始まっただけだったから、意志がないんだよね。それこそ渚さんが言ってた不良のロック・反骨心だけはあったけどそれを披露できずに寮生活であっためてきて、そこを飛び出してから開放したっていう、欲とか溜めるとかそういう期間もなく私はただ薄らと音楽を書いてきただけだから。そこへのしがみつきの力はすごいなぁ、と思ってて。

黒木:無い物ねだりだな、これは。でも、やっぱり羨ましいよ。

日食:そうだね、お互いにね。

黒木:自然発生的に音楽をやれるなんてメッチャ良いと思う、だって爪が伸びてくるみたいなもんじゃん。

日食:まぁ、ほっといても曲が出てくるみたいな(一同笑)?

黒木:日々の営みの中に組み込まれてるっていうのが一番良い気がするけどな。

日食:でもそれで日の目を見ることは難しいからね。

黒木:爪切ってるような感じで、それでご飯が食べられたらいいけど確かに、なかなかね(笑)。

  本当にお2人は話が尽きないですし、黙って横でただ聞いていてとても面白かったです。描く歌詞の世界や楽曲のタイプも全然違いますけど、根底に流れるものにどこか、同じ何かがあるのでしょうね。

黒木:友達が共通、っていうパターンが多くて、私たちと友達になりやすい人っていうのは似てて、統一感があると言うか。例えばテーマパークに一緒に行ったとして、普通の女子2人が行くのとは感覚が全然違うと思う、私たちは“どんなもんだろか見てやろうやないかい!”って感じで(笑)、あの行列に並ぶんだったら空いてるとこでいっか、って。

日食:そう、それで面白くもないアトラクションで終わるっていう。

黒木:キラキラできない、と言うかキラキラせずに付き合えるから私たち多分、友達なんですよ。女の子のキラキラした周波数を必要としない人じゃないと、仲良くなるのはしんどい。

日食:前に2人で遊びに行った時も、寂れたボロボロの町中華みたいな所に行ったしね。

黒木:ワンカップに水を入れて出てくるようなお店ね。

 



Interview by 高橋ちえ
Photo by 石井麻木

【対談後記】

お2人が顔を合わせて会話をするのは実に久しぶりなのは本誌に記載通りですが、顔を合わせた瞬間から話が止まらず、“もうこのまま進めちゃってください!”と始まった対談。リモートで色々なことが出来る世の中になり恩恵も多々あれど、やはり“対面”するからこその温度感と生まれる会話があるのだなと、お話する姿を見ながらしみじみ感じていました。それはお2人のライブを見ていても実はすごく強く感じている部分で、両者とも一音一音に命をもかけているような、見ている側も呼吸するタイミングが分からなくなってしまうようなライブをする。今や配信等で音楽やライブも楽しめるとはいえ、生で音が鳴っている場に行かないと伝わらない感覚だと思っています。
そんなお2人を写真家・石井麻木さんが撮り下ろしてくれました。黒木渚と日食なつこの両者、強いとか硬派なイメージがどうしてもあるのはライブでの印象が大きくあると思うのですが、柔和さや温和さといった部分も見えたら良いなと思った時、そんな写真を撮れるのは彼女しかいない、と思ってお願いしたその直感は正解だったと思っています。紙を通して、プリントだからこそ伝わる写真の素晴らしさも誌面でお楽しみいただきたいです。末筆に、写真を撮り始めて20年という彼女の写真展が、東京と大阪で開催されているのでそちらも足を運んでもらえたら嬉しいです!

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