サドウスキーを世界的なベース・ブランドへと成長させた創業者であるロジャー・サドウスキーへのメール・インタビューをお届けしよう。現在のドイツ/アジアでの生産体制や、サドウスキー・ベースの基本的な理念などについて語ってもらった。
ー現在サドウスキーのMetroLine、Custom Shopのベースを製造しているドイツのワーウィック工場(写真)は、他の工場と比べてどんな特徴がありますか?
これまでアメリカ、日本、韓国で見てきたギター工場と比べても、ドイツのワーウィック工場は、優れた職人たちと最高のテクノロジーが結合した素晴らしい工場でした。さらに地球環境にも配慮した100%カーボンニュートラルの設備を整えている点も大きな特徴なのです。
ードイツ工場とMetroExpressを製造するアジア工場ではあなたが技術指導を直接行ったのでしょうか? また、特にどの工程を重視しましたか?
まず、私が優先したことはサドウスキー・ベースの完成した状態がどのようなものであるのかを各工場のスタッフに把握してもらうことでした。そして、各工場で製造された試作品に対する、私からのフィードバックを反映させながら完成形へと近づけていきました。そうした工程を担ったのが製造マネージャーであるマーカス・スパングラーでした。
ーCustom Shop、MetroLine、MetroExpressの各シリーズの基本的な特徴は?
まず、MetroExpressはサドウスキーのエントリー・モデルです。1,000ドル以下の価格帯で最高のベースを実現することを目指して、サドウスキーの理念を100%引き継いだベースです。新型コロナウイルスの影響もあってアジア工場に直接行くことができなかったのですが、主に私とマーカス・スパングラーとの間で定期的にFaceTimeミーティングを行って、製造工程や品質を細かくチェックしながら生産を行いました。
MetroLineはサドウスキーがサドウスキーであることを示す全てのクオリティ、それはチェンバード・ボディ、ネック内部に仕込んだカーボンファイバー、ピックアップ、エレクトロニクといった要素を含んだ主要なラインです。
Custom Shopでは、MasterBuiltとCustom Shopという2つのラインを製造しています。MasterBuiltはいわゆるカタログラインのベーシックなモデルや一部の限定モデルをラインナップしています。Custom Shopはいわゆる一本もののカスタムメイド・モデルを製造しています。どちらも木目が美しいフィギュアド・ウッドを使用しています。
ーMetroExpressのベースに使われているオクメ材にはどんな特徴がありますか?
私はボディ材には一貫して軽量な木材を採用しているのですが、オクメはスワンプ・アッシュ、アルダーに続く3番目のお気に入りのボディ材で、大変素晴らしいトーン・ウッドなのです。
ー軽量な木材にチェンバード加工を施したり、チューナーなども小型・軽量化するなど、サドウスキー・ベースは徹底的な軽量化が図られています。それは演奏のしやすさだけでなく、サウンド面でもメリットがあるのでしょうか?
私は1972年からアコースティック・ギターの製作を始めました。80から90年代にかけてソリッド・ボディの楽器を多く作るようになっていくうちに、ソリッド・ボディもボディ自体のアコースティックな鳴りが重要であり、生鳴りが良ければ良いほど、アンプで鳴らした音も良くなるということを確信しました。ですので、サドウスキー・ベースで採用しているチェンバード加工は、音響的にもトーンを良くしますし、もちろん重量が軽減されるので演奏面でのメリットもあるのです。
ーフィンガーボード材はどんな基準で選んでんでいますか?
選定の基準はサドウスキー NYCに準じていて、音の明るさの順にメイプル、エボニー、ローズウッドを使い分けています。
ーネック・ジョイントなど、ネック周りに何か独自の加工を施していたりしますか?
ネック構造自体はごく標準的なものですが、他のブランドと比べて、このスタイルのネックにおいてはヘッドストックをかなり厚くしており、これにはデッド・ポイントを減らす効果があります。また、ネックの内部にもデッド・ポイントを減らす目的で2本のカーボングラファイトを仕込んでいるのですが、弦の振動に対するフィンガーボード全体のレスポンスが均等になるという効果も持ち合わせています。
ープリアンプや、ノイズを軽減するためのキャビティ内部の加工にも、あなたの独自のアイディアが生かされていると思います。
1979年にマーカス・ミラーの1977年製フェンダー・ジャズベースを改造したことで、サドウスキーのプリアンプは世界的に有名となりました。トランジスタ回路でトレブル・ブーストとベース・ブーストのみという特殊な仕様が特徴です。また、1980年からキャビティ内にシールディングやハムリダクションといったノイズを軽減する技術をいち早く取り入れました。現在では他のブランドでも採用されて一般的な技術として知られていますが、私たちはそのパイオニアとしての自負を持っています。
ーサドウスキーのオリジナル・ピックアップには何か特別な素材や製法を用いていますか?
私たちのピックアップはマグネットやコイルや製法というよりも、ヴォイシングを重視してデザインしています。シングルコイル・ピックアップを除いて、すべてのサドウスキー・ピックアップにはハムキャンセリングが施されており、私たちのピックアップとプリアンプの組み合わせにより、他のどのブランドのベースでも真似できないサウンドを生み出しており、世界中のレコーディング・エンジニアやFOHエンジニア(ライヴ会場の音響エンジニア)から賞賛されています。
Interview by JUN SEKINO,TOSHIHIRO KAKUTA
※本記事は月刊 Player 2021年12月号特集を再編集したものです。
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☎︎03-3862-8151
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