3の倍数月2日発売の季刊音楽誌『Player』のウェブサイト。最新号情報はもとより、誌面でできない音楽、楽器情報を発信していきます。

マツキタイジロウさん (SCOOBIE DO)×秋野温さん(鶴)対談「ライブがある限りギターソロはなくならないですよ」

最新号となるPlayerの別冊で、SCOOBIE DO(以下スクービー)ギタリスト・マツキタイジロウさん&うたギター・秋野温さんの対談を掲載しています。元々お2人は飲みに行ったりする仲でもあるものの、やはりこのコロナ禍で中々ゆっくり話す機会がなかったとか。今回はギターを持ってふらっといつものバーに集まって会話を楽しむ、そんなイメージで企画してギターのみならず盛り上がったあんな話こんな話は誌面でお読みいただきつつ、未掲載のこぼれ話をお楽しみください!

 最近、“ギターソロをスキップして聞く”という聴き方をされている音楽リスナーが多いといった話を聞きますけど、これは痺れるギターソロだなという曲等を教えてもらいたいなと。
マツキ:ギターソロとして本当に必要で、しかも、これでしかないって思うギターソロを弾くのは、BOØWYとしての布袋寅泰さんかな。
秋野:今日これまで(ソウルやルーツミュージックといったことを)話してきたのに!?
マツキ:何だったんだよ、っていう感じですけど(一同笑)。BOØWYの曲はギターソロが全部大サビと言うか、AメロBメロサビ、と来てギターソロが絶対にDメロになっているんですよ。ギターソロがもう1つ展開になっていて、普通だったらAメロ進行とかサビ進行の中でメロディ崩しのギターソロを弾くっていうのがいわゆるオーソドックスな考え方だけど、布袋さんはDメロとしてギターソロを考えているというか。だからBOØWYの曲は大サビで歌がないんだけど、ギターソロが大サビをやってるからすごくシンプルで覚えやすい。すごく良く出来ているんだなぁって昔に感動して、で、今もやっぱりそれがギターソロだなって思いますね。世の中にカッコいいギターソロはいくらでもあるけど、ギターソロの機能性って言うのかな、それはBOØWYとしての布袋さんのギターソロだなと思うんですよね。ギターソロが独立して曲の別パートを担うってあんまりないんですよ。
 わたしもBOØWY世代で聴いていたので、なるほどなと思いますね。
マツキ:でも今の時代はやっぱりね、皆ちゃんと音楽を聞く時間がないからね。俺も前にやってたことがあるんだけど、楽曲提供のコンペとかがあって。“サビ頭じゃないと”っていう話がまずあるんだよね。
 サビから楽曲が始まると曲のイメージを審査する側にもすぐに伝えられますものね。
マツキ:1コーラスだけ提出する場合が多いからね。あとは、楽器が出来ない人も曲を作って形に出来るような時代になってきたから。アフリカ・バンバーターとかドクター・ドレみたいに昔のヒップホップのトラックメイカーの考え方みたいになってるのかなって思う。昔のヒップホップってイントロ・アウトロがない曲多いんですよね。昔はサンプリングって言って何かの曲からドラム1小節を取り出してループさせて、そこに別の曲のベースラインだったりピアノとかギターといった上物を足しながらトラックにしてたんだよね。曲の進行はそうやって足した音を出したり引いたりしてトラック数だけで演出してた。今はそういう考え方に近いのかなって思う。楽器が出来ないから音を増やすか減らすかというところで作曲していると言うか。そういう人たちも多いからギターというものの意味が分からないのかなって(笑)、で、そういう曲も増えてきたから“ギターソロってなぁに?”っていうことになっているんじゃないかなと思ってて。
 仰る通りで、わたしも新宿ロフトで開催のティーンズイベントで司会をしているのですが楽器ではなく打ち込みでエントリーする方が増えているのを感じていまして。
マツキ:勿論、楽器を使わないで曲を作ることが良い悪いっていうことではなくて、布袋さんの話の感じで、前までならギターという楽器が曲にもう一つ展開をつける。それこそギターがイントロやアウトロの役割をしていたとか、曲の真ん中で曲を彩る役割をギターがすごくやっていたんだけれども、それがギターではないものに代わっているのかなと。それが一時は歌の中に突然ラップが入ってきたりとか、そういう風に成り代わってきてるのかなと思いますよね。だから効果的なギターソロであれば皆、耳を傾けるんじゃないかなと。
 作曲をされる方だからこその目線ですね。
マツキ:俺はギタリストだしギターソロが好きだから聴くけど、例えばジミ・ヘンドリックス状態みたいなギターソロは、聴き慣れない人からすると良く分からないってことなのかもしれないですよね(笑)、“何のためにこのギターソロが入ってるんだろう?”ってなっちゃってるのかな、って。


 例えばスクービーの新譜『Tough Layer』(8/24リリース)収録の「成し遂げざる者のブルース」のギターソロはすごく必要だと思って聴けると思うんですけどね。
マツキ:そうそう。それは、入れなきゃダメだなと思って(一同笑)、アウトロで延々と続くギターソロを。自分がブルースロックとかを聴いてた時に“何でこんなにギターソロが長いんだろう?”って思う曲がいっぱいあるんですよ。でも、そういう時代もあったんだなと思うと、そこに影響を受けてきた者としてはやっておかないとな、無くなっちゃうと寂しいなと思って、今回は敢えてやってみました。あんまりスクービーでもこういう曲はないんですけど、僕らが聴いてきたルーツを一緒に共有したい、僕らが好きだった音楽も好きになってくれたら嬉しいな、みたいなところもあるんですよね。何て言うんだろう、伝えていく役割って言うのかな。昔あった自分たちの好きだったものが全くなくなってしまったら嫌だな、だから発信していきたいなって思っているところがあって。カヴァーアルバムを出したりカヴァーばっかりやるライブっていう泥臭すぎるのをやってるのも(笑)、そうやってやらないといけないんじゃないかなって思ってるからなんですよね。
 以前、東京スカパラダイスオーケストラにお話を伺った時も“自分たちの音楽を経由して昔の音楽にも触れてほしい”といった、同じようなことを仰っていたのを思い出しました。では秋野さんはギターソロに対して思っていることは?
秋野:自分のルーツは70年代のハードロックにあると思っていて、それこそジミー・ペイジやリッチー・ブラックモアを始めとするワールドワイドなギターヒーローがいっぱいいた時代への憧れみたいなものをずっと持ち続けてるので、何の疑いもなくギターソロはあるものだと思ってるんですけど(笑)。それが最近、(リスナーの)耳に分かってもらえないんだなという話を知って、自分も楽曲を作ってて無理に入れることは最近はしないですね。何より僕の場合、歌の間奏で休憩みたいなノリもあるのですが、実はギターソロがあると休憩にならないんですよ。
マツキ:気が休まらないよね(笑)。
秋野:休まらない、でも自分が楽曲を作ってる時に(ギターソロがなくても)“ここでギターソロ行ったらカッコいいよね〜!テンション上がるよね〜!”っていう瞬間がちゃんと自分の中にあるので。世の中の若い子がどう思おうが俺はここでギターソロ弾いたらカッコいいと思うから弾くよ、っていうつもりで(曲を書いている)。ギターソロっていうのはギターでロックをやってるんだったら、やっぱりあるべきだと思うし。ウチのバンドはキャッチーでポップなものっていうテーマがあるんですけども、たまにバンド全体で演奏で、ギターソロだけでなくコードをただかき鳴らして全員が(各々の楽器と音に)向き合ってやる、っていうカッコよさもやったりするので。ギターソロっていうこだわりじゃないですけど、演奏だけで持っていくっていうシーンってやっぱりカッコいいじゃないですか。だからそれが退屈だと思われるんだったら、それがもう分かんないですよね。だからライブでギターソロが来たら、自分のギターヒーローのイメージでギターヒーローのつもりで弾きますけどね。ギターソロ、衰退していくんですかね?
マツキ:いや、なくならないとは思うけどね。
 “パソコンで音を生み出していても、人気が出ればやっぱり生音と一緒にライブをやるのは避けられない”といったお話をとあるライブハウスの方がしていて、尤もだと思ったんですよね。今の秋野さんのお話の通りで、ライブハウスで悦に入って演奏しつつ素晴らしいハーモニーが出ているのを見ると、尊いなと思ってしまうんですよ。
マツキ:そう、だからライブがある限りギターソロはなくならないですよ。
秋野:そうですよね。繋がりましたね、話が(一同笑)!

【対談後記】
最後、秋野さんが“繋がりましたね、話が(一同笑)!”で終わっている部分は誌面と併せてお読みいただければ繋がるはずで、ライブというものがいかに大切なものなのかを本誌で語っています。“何だかんだで47都道府県のうち多分、30県ぐらいは2マンで一緒にやっているんでは”と本誌で語っている通り、まさに盟友の両バンド。遡ってわたしが鶴と出会ったのは2009年のようですが(ラジオのゲストとして)、地元の岩手県でこの頃に両バンドの対バンを見ていた記録が出てきました。時代がひと周りしてこうした対談を組めたこと、それぞれが続けてきたからこそ再会できることを本当に嬉しく思い、原稿にまとめながら何度も自然と笑みがこぼれていました。ただ、せっかくすごいお酒も並ぶバーという場所なのにアイスコーヒーを飲みながらの対談だったのが心残りで、次回はアルコール片手にトークしましょう!と約束。気兼ねなくお酒とともにファンキー&メロウな会話が出来る日が、すぐに来ますように♪

Edit by CHIE TAKAHASHI

SCOOBIE DO
Tough Layer
ビクターエンタテインメント CD
VICL-65726 8月24日 3,300円(税込)

 


4-1
Soul Mate Record CD
SMRE-0027 4月9日 1,500円(税込)

 


4-2
Soul Mate Record CD
SMRE-00 28 8月11日 1,500円(税込)

 

Player SPECIAL September Issue -ニッポンのクロスオーバー2にディープなマツキタイジロウさん(SCOOBIE DO)×秋野温さん(鶴)対談を撮り下ろしで掲載!

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