VOXより発売されたセミホロウ・ギター、Bobcat。このギターを使用しているギタリストのコメントをお届けしよう。
一人は多彩なジャンルを網羅するギター・プレイに定評がある竹中俊二。
もう一人はブルースやソウルといったルーツ・ミュージック・シーンで活躍するギタリスト/ボーカリストの大久保初夏。
キャリアもジャンルも異なる二人のギタリストにボブキャットの魅力を語ってもらった。
「R&Bやソウルっぽい感じの音楽、モータウンっぽいものにはピッタリ合うと思います」/ 竹中俊二
ー竹中さんは普段からセミホロウ・ギターを使っていますが、ボブキャットは他のセミホロウと比べてどんな違いを感じましたか?
竹中:ノーマル・タイプのセミアコはフジゲンをよく使ってるんですけど、それ以外だとギブソン ES-347(1978年に登場したES-335と355の中間に位置するモデル)というギターが割とヴィンテージな太い音なんです。そうじゃなくて、軽くジャキジャキ刻んでストロークもできちゃうようなシングルコイルのセミアコってないのかなって思ってたんですよ。なんだったらストラトみたいに3発あったらハーフトーンとかも出るなって思って。そんな妄想をしてたらコレを見かけて「コレ、ピッタリだ!」って(笑)。それで使ってみたんですけど、ハードに歪ませても全然大丈夫だし、チャキチャキした感じが普通のセミアコとは違いますね。ピックアップがシングルコイルっていうのが大きいんじゃないかと思いますね。シングルコイルでフルアコっぽい箱鳴り感があったらいいなって。R&Bやソウルっぽい感じの音楽、モータウンっぽいものにはピッタリ合うと思います。
ー竹中さんはギターのピックアップに対するこだわりも強いと思いますが、ボブキャットの2タイプのピックアップにはそれぞれどんな印象を持ちましたか?
竹中:V90の方をさっき弾いてみて、すごくノーマルな感じがしますね。P-90タイプのピックアップはすごく好きなので、もっさりしてないというか、ハムバッキングのいいところとはまた別のP-90独特のエッジのある感じというか。それに比べると、S66の方は3シングルといってもストラトとはだいぶ違いますね。やっぱりセミアコに載っかった感じのシングルコイルのサウンドだなと思います。実際、弾いてみた印象は、S66も普通のシングルよりは太めでP-90寄りの音だなって思います。
ー初夏さんはV90とS66を使い分けてボブキャットのPV動画を2本撮影しましたね。
大久保:印象的にはトーテム(大久保が長年に渡って愛用しているギター)とV90は近いので好みではあるんです。S66は繊細というか細かいプレイができるのかなって思いました。V90は太めな音を出してくれるので、私がもしトリオ・バンドでライヴをやるとしたら、たぶん最初にコレを使うと思うんです。大所帯バンドでちょっと細かいことをやる時にはS66かなっていう感覚ですね。
ー細かいことというと?
大久保:カッティングだったり単音のバッキングとか、表情を変えたい時はS66の方が変えられるので、同じタイプのギターを使っている人と被らないようにしたいとか。一人で思いっきりソロを弾く時は、V90の方が気持ちいいかなって個人的には思います。
ーボブキャットは独自の形状のセンターブロックを搭載していて、軽量かつボディ鳴りを損なわないのが特徴なのですが、実際に抱えてみた時のバランスはいかがですか?
竹中:センターブロックが入ってるセミアコだと重いものが結構多いので、そういう意味ではちょうどいい感じの重さでヘッドとのバランスも悪くないですね。
大久保:私はタッパ(身長)が170cm弱あるので、何も気にならなくて(笑)。フィット感的にも全然ストレスもなく弾けちゃいます。
ーボディの鳴りはいかがですか?
竹中:もちろんピックアップもサウンドが変わる要素なんですけど、ボディ自体がいい感じで鳴らないと、ピックアップを載せ替えてもうまく鳴らないことがあるので、そういう意味でいうと楽器自体の鳴りも悪くないと思いますね。
「一人で思いっきりソロを弾く時は、V90の方が気持ちいいかな」/ 大久保初夏
ー初夏さんはシングルコイル・ピックアップのトーンの方が好みなんですか?
大久保:デレク・トラックスやウォーレン・ヘインズとかアメリカ南部のロックが好きだったりするので、ぶっとくて深い音を目指してはいます。でも本当はね、もっと色んな表情の音を出せる方がいいんだろうなとは思うので、そうするとしばらくはS66の方を使った方が、表情がどんどん変わってくるのかなって思って。V90だと私好み過ぎて(笑)。
ー竹中さんは様々なジャンルで活躍されていますが、ボブキャットはどんな場面で魅力を発揮できると思いますか?
竹中:シングルコイルでもハムバッキングでも、できないジャンルって実はあんまりなくて、サウンド・キャラクターでイメージですかね。こういうサウンドだとこういう音楽がイメージしやすいなとか。やっぱりハイファイな今時っていうよりは、ちょっとブルース色のある音楽の方がどちらのピックアップもいいなと思いますね。
大久保:私はエフェクターはほとんど使わなくて、フルトーン OCDだけでライヴをやっちゃったりするんですよ。手元だけでコントロールしたりとか。そう考えると、直アンで表情を変えたりしたら面白そうだなとは思います。さっきもアンプに通して弾いてみたんですけど、全部のピックアップのバランスがすごい良くて、しっかり芯のある音が出ててパキッとしてくれてる。アンプの調整によっては深い音をちゃんと出してくれますし。もしかしたら若い子のバンドでも、S66だったら抜け感のある大きなバッキングをしてもバンドの中で映えるかもって思いました。
ービグスビー搭載モデルが新たに発売されますが、竹中さんはご自身で後からボブキャットにビグスビーを取り付けてみて音のキャラクターは変わりましたか?
竹中:ウェイトが増えて、ビグスビーを載せた分だけちょっと硬くなるというか、抜けが良くなる感じがしました。あと音が揺らせるのは大きいアドバンテージですね。
大久保:カッコいいですよね。ビグスビー付きを見た瞬間にブライアン・セッツァー弾きたいって(笑)。やっぱりライヴの時に助けてくれるものって多ければ多いほどいいですし、表情を付ける一つとしてあってくれた方が嬉しいですよね。この青い色のギターも最初見た時、めちゃいいなって思って。もう一本はパーツも全部真っ黒なのがカッコいいですよね。やっぱりミュージシャンはギターを持っている姿がカッコいいのが一番大事だと思うので。
ーアンプとの相性はいかがですか?
竹中:やっぱりヴォックス・アンプとの相性がピッタリだと思いますね。ちょっと香ばしくてエッジが倍音豊かな感じがより引き立つと思いますね。
ー開発者であるリッチ・ラスナーさんに訊いたところ、ボブキャットは高音域をカバーできるセミホロウ・ギターというコンセプトを元に開発したと語っていました。
竹中:リズム・ギターもバッチリで、ハイエンドも綺麗に出ますね。
ーソリッド・ボディとシングルコイルの組み合わせだと、逆に音が抜けすぎることもあるんですか?
竹中:セミアコと比べて、ソリッドってそのまま“バーン!”って出る感じで、分厚いサウンドのバンドとかだとソリッドでもいいんですけど、小編成とかスペースが結構あるような音楽だとセミアコの方が箱鳴りしてるのですごくいいなって思いますけどね。トーン自体にちょっと温かみがあるというか。
大久保:たしかに耳が痛くならない感じの、先がちょっと尖ってるけど丸いっていう印象はありましたね。
ーブルースだと低音弦でのリフを弾くことも多いと思いますが?
大久保:いいと思います。S66はちゃんと抜けてくれる。でも私的にはV90で思いっきり弾きたいですけどね(笑)。興味ある人は両方試奏して、自分の好みに合わせて購入するのがいいと思います。でも、この2本で網羅してる感覚はありますね。
竹中:ね、この2本をセットで買うことをオススメしたいな(笑)。
Interview & Photo by TOSHIHIRO KAKUTA
※本記事は月刊Player 2021年1月号特集を再編集したものです。
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