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カナタタケヒロ(LEGO BIG MORL)×横山直弘(感覚ピエロ)対談 Part.2

Photo by 北村和孝(Player)

 現在発売中のPlayer最新号(4-6月合併号/5/27発売)で彼ら2名の対談を掲載しましたが、想定以上に弾んだ未公開の彼らのトークをこちらで再現します。では早速、お2人の姿を脳内にイメージしながらお読みください!

横山:この前の(対バン時の)リハで、キンちゃん(=カナタ)が“ギターの音、鳴らへん!”って、その前にピアノの曲のリハーサルをしててひょっとして接触とかのトラブルかな?と思ったら、単にシールドを挿してなくて(一同笑)。
カナタ:20年やってるんですけどね〜(笑)。
横山:でも面白いのが、見てるこっちは“ウォー!”ってテンションが上がる。あれは何でだろう、頭のどこかでライブ中にアクシデントがある方が面白いって思ったりしつつも、アクシデントがないようにしようって思っている自分もいるし、完璧なものを見せたいと思っている自分がいて。
カナタ:それは消えるものではないし消えなくても良いものやと思う。ただ表現の上で、自分が1つ2つと塗り替えていく部分が出てくる、ってことやんか。絶対、俺も完璧やなきゃ嫌やからね。だから音が鳴らん、なんてあり得へん(一同笑)。
 完璧にライブをやる、という意思がある前提の元で演者はステージに向かっていても、見ている側はその場限りのアクシデントとかを見るとむしろ“ライブならでは”と良き思い出になったりしますもんね。
横山:僕、今日の対談で1個、解けた謎があって。キンちゃんって天然100パーセントで前頭葉で喋る人なのか…な?って?
カナタ:え(笑)?それってどういうこと?
横山:思ったことを脳みそのフィルターを経由せずに真っ直ぐ言葉にしちゃう人、なのかな。
カナタ:誰が考えずに喋ってんねん(笑)!
横山:って、ちょっと思っていたところがあったんですよ。でも今日話してたら、本当に色々と考えていて、これは一対一で話さないと分からないことだったと思うし、僕が思っていた以上に気にしいなんだなぁっていうのもびっくりしました。
カナタ:分かってくれたらえぇねん(笑)、よっぽどうちの(タナカ)ヒロキ(g)と(ヤマモト)シンタロウ(b)の方があっけらかんとしてると思うよ。よく、“そんなん、気にせんでえぇやろ!”って言われるもん。だからどっちかって言うと彼らが前頭葉な生き方やと思うわ(笑)。
横山:キンちゃんって日々ネガティブな方だと思いますか?自己評価で、ポジティブな方だと思いますか?
カナタ:えぇー、ムズい!
横山:僕は、自分がネガティブであるが故にポジティブであろうとするパターンなんですよ。ネガティブだからポジティブであり続けようって思い込むっていう。
カナタ:そうねぇ…基本的に俺は、誰かを笑かしときたいのよね。自分がネガティブとかポジティブとか言うよりも、そういう人でいたいっていう。根っからそういう人間やと思ってて、だから自分を犠牲に出来る。
横山:誰かに何かを与えたい、っていうのが最初にあるんですね。
カナタ:確かに、もらうのは苦手かも、何事も。奢られるのも苦手やし、とか言いながら(事務所の)社長とか先輩とご飯行くと“ご馳走様です!”って言うけど(一同笑)。まぁ、どっちか言うたらポジティブかもしれんな。
横山:ある意味、太陽みたいな人ですね。
カナタ:目指してはいるなぁ、うん。寂しがり屋やからなぁ、俺。
横山:そうなんですか(笑)?もう僕は、完全に闇属性なんで。

Photo by 西槇太一

 横山くんとは“闇属性のアーティストたち”で違う企画も考えてますしね(笑)。でも誰しも、ポジティブやネガティブを行ったり来たりしながら生き抜いて今があるのではと思ったりします。そういう意味では、ポジティブでいられる要素として音楽の存在っていうのは大事なものなのかなと思ったり?
カナタ:例えば俺が歌えなくなったとしたら…どうすんねやろなぁ。
横山:そもそも、音楽を始めたきっかけって何だったんですか?
カナタ:もう小っちゃい頃から、お歌が好きだったのよ。お婆ちゃんの前で演歌を歌ったりとか、それで皆、喜んでくれて。家の近所のカラオケ屋さんで採点してくれる機械が流行り出した頃、小学〜中学になるぐらいかな、満点をとって。それで俺は、歌手になろうと思ったね(笑)。それから、ゆずとかを聞き出してアコギを弾くようになってコピーするということを経験して。ハイスタに触れてエレキを弾いて、っていう流れやね。
横山:最初っから音楽1本でやっていこうって思ってましたか?
カナタ:思ってた、小、中、高校とずーっと変わらず。なのに小学校の卒業文集だったかな、目指したい職業に“会社員”って書いてて(一同笑)。
横山:音楽をやりたいけど心のどこかで、大丈夫かな?と思った表れですよね(笑)。
カナタ:高校も卒業はしてるけど、でも学校もまともに行かれへんような子やったからね。
横山:レゴのメンバーさんはその頃には知り合ってるんですか?
カナタ:高校からの友達やからなぁ、もう、ずっと。
横山:その時から“もう就職はしないで音楽でやって行こうぜ!”みたいな会話があったんですか?
カナタ:高校の時はそんな話はしてない、彼らが大学を卒業するぐらいかなぁ。シンタロウも就職の内定をもらったりしてたんやけど、それを蹴ってレゴに入るってなったから。だから彼らが大学の時に組んだバンドやね。今や、音楽なしでは自分の人生考えられない、みたいなことになってて、こんな幸せなことはないですよね。
 そうですよね。では、横山くんが音楽を始めたきっかけって?
横山:ウチの親父が60年代〜70年代のロックが好きで、車でずーっとビートルズを流してたんですよ。
カナタ:羨ましい環境やね!
横山:何のこっちゃ、全然分かんないまま聞いてるうちに歌えるようになってきて。能動的に“聞きたい!”って思って、家の中でビートルズを引っ張り出してきて流していたらお袋が入ってきて、“アンタ、ロックなんか聞かないでクラシックを聞きなさい!”って怒られたんですよ。それぞれの家庭環境で違うとは思うんですけど何か、子供心ながらに“ロックって子供に聞かせられない音楽なんだ”って思って。だからちょっと反抗もあったと思うんですよね、音楽をやるということが。口下手で、言葉にして誰かに何かを伝えるのも苦手だったんで。だから自分がギターをやることだったりとか歌うことは、お勉強に対する、真面目に生きることに対する反発みたいなところだったんだと思います、今思うと。
カナタ:スッゲー分かる。俺も中学の時とかは、お塾に行って、お勉強して、高校入れさせてくれて、ってなったけどギターを持ったのは、親に対する反抗ないしは、“俺はこう生きる”っていう(表れで)、その精神は分かるなぁ。
横山:あの時って、悪いものがライブハウスとかロックだったり、だったから。
カナタ:そう、まさに。道を外すと思われたよね、分かるわぁ。
横山:だから自分の周りの環境にそんなに反発をしていなければ、こんなにのめり込んで音楽をやっていなかったかもしれないと思いつつ、でもやっぱりあの時に感じたライブハウスの空気だったり溢れてる活気だったり、集まってくる人たちやギターを持ってる人に魅了されて、そのエネルギーに引っ張られたところもあるんだろうなって。
カナタ:そこで出来る友達って、全く高校にはいないようなヤツらがおったりするのよね。
横山:そうそう、そうなんです。考えてることも全然違うからすごく面白くて。それで音楽をやればやるほど強くなるし、知れば知るほどのめり込んじゃって、今があるのかなって思ったりしてます。
カナタ:そうやね、高校の時なんか“こんな世界があるんや!”って。同じライブハウスで、ツアーで回ってくるバンドも同じステージに立ってたりするし。
横山:僕は北海道にいたんですけど、それこそ高校の時に同い年のバンドで、僕らはそれまでコピーしかやったことがないのに自分たちで曲を書いてパフォーマンスをしてる、それを見た時なんかもメッチャ衝撃を受けてしまって。
カナタ:そうやね、それホンマに格が違うって思うよね。
横山:自分たちで曲を書く、それで自分たちはこういう風に見せたいんだっていうことまで考えてて、それを全部バーンってステージで出して見せて、チケット代もちゃんと取ってお金も得るみたいなことが衝撃的すぎて。コピーバンドをやるだけじゃなくてこういう世界があるんだ、って。趣味じゃなくてガチでやっている、それを高校生の時に初めて思ったっていうのも今、音楽を続けている1個の理由かもしれないなってちょっと思いましたね、今。結果、それを今自分がやることになっているけどやったらやったで、こういう思いをしながら続けてたんだっていうことも分かるって言うか。外からは華やかでいいところしか見えないかもだけど、内側に入っちゃうと“マジか、こんなに止めたいって思う瞬間があるんだ”って思ったりとか、本当にやってみて分かることだなと。
カナタ:うん、そうやなぁ(とにこやかに言いながら、何度もうなずく)。
横山:バンドでなく、例えば会社員をやっていても、ひょっとしたら同じようなことを思ったのかもしれないし。
カナタ:そうやね、多分きっとね。
横山:でもそこで、自分はきっと音楽を止められないんだろうなっていうところが自分を支えてることなのかなぁとも思いますよね。音楽がなかったらきっと、どうしようもないポンコツなんだろうなって思うと(笑)、音楽を止めるっていう勇気はないなぁと。
カナタ:辛い時ってあるよなぁ。それで行くと、曲が出来へんとかで辛いってこともあるやんか、どういう時に“曲、書きたい!”ってなる?
横山:僕が最近多いのは、カッコいいものに出会った時です。
カナタ:(声を大にして)メッチャ分かる!!メッチャ同じや、どうした(一同笑)!?
横山:何これカッコいい!って感じた時に、本とか映画とかもそうで、今まで受けてこなかった刺激を受けて“こんなものが世の中にあったの!?”って思った時にすごく、曲を作りたくなりますね。
カナタ:同じやねぇ、俺も映画とか観てそれが素晴らしい映画だとしたら音楽でエンドロールを考えるもんね。俺だったらこういう曲を流すな、とか。そういう思いで出来てる曲も(これまでに)あるし。
横山:擬似タイアップ、ですよね(一同笑)!

Photo by ヤマダマサヒロ

【対談後記】
上記の対談中、横山くんが“外からは華やかでいいところしか見えないかもだけど”と話しているくだり、感覚ピエロがそれまでの4人体制から変わるタイミングのライブMCでも横山くん自身がまさに似たようなことを話していました。付け加えてより正確に表すのならば“華やかに見えるかもしれないけど、もがいてもがいて、泥臭くバンドをやっている”、と。実はそんなMCから、この対談を思いつきました。スポットライトを浴びていても見えない部分、似たような境遇のバンドマンが語り合うことで彼らの見えざる内面のようなものを照らし出すことができるのかな、と(そんなものは照らす必要がないと仰る方もおられることを承知の上で)。
手前味噌にはなりますが、この対談を組んで本当に良かったと思えた時間でした。はっとしたのは、対バンをしていてもこのコロナ禍で打ち上げも出来なければ、楽屋も別々で下手をすれば思うようにバンドマン同士で話す機会すらままならずに時間が過ぎていたこと。全国をツアーで回る彼らの話を聞きながら、改めてこれまでの“当たり前”は当たり前ではなくなっていることや、仲間と変わらず楽しそうに音を鳴らしているかのように見えても時に孤独であったり、バンドや自己を見つめ直して深い沼に落ち込んだりもする。今回の対談を通してシンプルに、会話をすること・話をするという行為って良いものだなぁと思わされましたし、わたし自身も色んな方との会話というのを改めて大切にしていこうと思いました。この日の2人、お話が途切れることは全くなく予定時間をあっさりオーバーして横山くんはバンドのリハーサルに遅刻(ごめん!)してしまう次第、でも良き時間だったという証拠ですよね。
さて先日、感覚ピエロのツアーファイナルは見届けました(@恵比寿リキッドルーム)。サポートのギタリスト・タケヤドラゴンさんが見事なまでのすご腕で、感覚ピエロの楽曲が音源よりも立体感あるライブの音像で届けられていましたし、ライブを客観的に見つめバンドをサポートする立場に今は回っている感覚ピエロのギタリスト・秋月氏の冷静な目もバンドにプラスに働いていると感じます。かたやレゴの方は6月にツアーを見る予定でいて、新作アルバムの素晴らしい楽曲たちがステージからどう聞こえてくるかとても楽しみにしています。今回の対談を通して、彼らのことはもちろんだし、“バンド”という人間の集合体が音を奏でるということはかけがえのない素晴らしいことでもあるのだ、と感じたりしてもらえたらなぁと思っています。

Interview & Text by CHIE TAKAHASHI

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