Player・Spring号(3/6発売)に掲載の内澤崇仁さん(androp)×菅原卓郎さん(9mm Parabellum Bullet)の対談。意図などは本誌でお読みいただくとして、実際のお時間はとにかくギターにまつわるお話がとめどなく続き、写真撮影中も自然とハモったりしながらギターを弾いていたり。終了後は内澤さんが高校生の時からお世話になっているという地元(青森・八戸市)の楽器屋さんから独立したという方が新たに始めたお店・SOUND SPIRITSを菅原さんに紹介しつつ、そこでいただいたというオーヴァードライブのエフェクターを見せながらまた話が止まらない(笑)。ということで止まらないお話、本誌未掲載トークをここで展開します!
そもそも遡ってお2人が“こういうバンドをやりたい!”とか、最初に憧れたり思い描いたバンドというのは?
内澤:そんな話、ちょうど2人で弾き語りツアー(2020年)の時もしてたね(笑)。
菅原:9mmは2004年に結成して、当時のHPとかにはオルタナティヴ・ガレージロックバンドって書いてて、分かりやすく言うとストロークスが激しくなったら良いなとイメージしてたんだけど(笑)。でもメンバー共通のルーツだと日本ではブランキー(BLANKY JET CITY)とかミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)とかイエモン(THE YELLOW MONKEY)がありますよね。それで9mmにはメタルの要素も入ってくるんだけど、ずっとメタルってなんかダサいなという先入観をずっと持っていて。90年代育ちだから刷り込みもあると思うんですけど。大学に入ってから、メタルの馬鹿馬鹿しくてすごく楽しい、音楽とそのスタイルの面白さに気づいたんです。9mmにもメタル要素を出すようになったのはメジャー以降なんですけど。あと結構大きいのは横須賀のかぼちゃ屋っていうライブハウスでハードコアバンドを見に行くことがあって。
そうなんですか!?
菅原:俺はそんなに行ってないけど、滝が9mmと同時に始めたバンドがそのシーンに接近していて、当時はENDZWECKのワンマンをERAに見にいったり、バンドの暴れっぷりが楽しくて俺たちもあれをやりたいっていうピュアな衝動を持ちました(笑)。ステージに出るならああでなくちゃっていうマインドを持つようになり、それで暴れ出したっていう。
内澤:それで暴れ出したんだ(笑)。
菅原:そうそう。ライブ終わって反省会をした時に、まだVHSの時代でビデオを見てたらある時、滝がすごい暴れてて。(滝が)“これ、メチャメチャ良いから(メンバー)皆ももっと暴れた方が良いよ”と(笑)。わかった、やろうって可能な限り暴れる方向になりました。自分たちにとってはすごく大事で、ライブをするからにはすごいエネルギーを発する人になりたいとゆう風に思ったんだよね、すごく。
内澤:僕は真逆だもんなぁ、やっぱりメタルは好きだったりするし人生で最初の2〜3枚目に買ったアルバムってメタリカだったりするし、初めて買った歪み(エフェクター)もメタルゾーンでやったりしてたんだけど、
菅原:ヤバいね!皆、買うよね。メタルゾーンは!
内澤:でも僕はそれに挫折したタイプで。ブリッジミュートは出来るけど速弾きは出来ない、みたいな挫折組で。じゃあどうしようかな、となると変な音を出そう、っていう方でRadioheadとか、(Radioheadメンバーでもある)ジョニー・グリーンウッドみたいな速弾きじゃないけどちょっとクセのある、面白いギターを弾く人っていうのに憧れて。そっちの方に行くんですよね。
菅原:でも俺も、速弾きは出来ないの。
内澤:いや、やってるじゃん!あとステージでさ、ツイン(ギター)でとかそういうのも(本当は)やりたかったんですけど、駄目だったんだよなぁ。
菅原:ツインリードね(笑)。でも速弾き・速く弾けるのってさ、どんだけ練習しても越えられない壁がある気がする。
内澤:そう!それこそPlayerとかも憧れを持って、ちょっとはヒントがないかなってイングウェイ(・マルムスティーン)が載ってるのを読んだりしてたけど(出来なくて)、僕は、速弾きも才能だと思う。
菅原:身体的な素養とかもね、メタラーになれる血筋の人がいると思う。太りやすい・太りにくいぐらいの差があると思う(一同笑)。32分音符を弾けるか弾けないかというのは。
内澤:選ばれし者、みたいな。でもやっぱり好きだから、(速弾きの)熱がたまに来るから“やってみよう、スウィープ(奏法)を練習してみよう”って思うんだけど…何度も挫折してる。
菅原:スウィープは超面白いから、入れられたら良いもんね。andropの曲中にもトゥルルルル、ってスウィープが出てきたら、ねぇ。だから言っておきますと、Playerを読んでいる方で速弾きが出来る方は、選ばれし者です。いくら練習したって出来ないんだもん、少なくとも、俺は向いてないんだなとは思ってる。
内澤:もう、(プレイする)人じゃなくてギターの方に何か仕組みがあるんじゃないか?とか思って、ギターのせいにしたりとかね。
菅原:指板を削れば良いんじゃないか?とかね(笑)。
androp「September」
今回、誌面の方にお2人が持ってきてくださったギターを掲載していますが、内澤さんがかなりギターを所有しておられることに驚きでした。
菅原:ウッチー、結構持ってるもんね。
内澤:持ってますよ、僕は廃盤になるギターが結構好きっぽくて…
菅原:あの、リッケンをデザインした、何だっけ…?
内澤:その人(=ロジャー・ロスメイズル)のデザインのは僕、全部好きでした。フェンダーのコロナド、スターキャスター、リッケン、全部同じデザイナーっていう(笑)。でもデザイナーが全部一緒だって知って、ちょっと嬉しかったですね。
菅原:今度、全部並べて写真撮った方が良いよ。
今後、そうさせていただくつもりです(笑)。菅原さんはPlayerのご登場が久しぶりなのですが、あの時より所有のギターもきっと増えてますよね?
菅原:俺はヴィンテージ嗜好とかも全然ないし、ギターを全然買わないですね。
内澤:へぇ〜!?
菅原:うん、全然買わない。まだ、これ(ESP Trickster/菅原さんシグネチャー第二弾として2019年リリース)で出してない、出せてない音があるなぁって思うかな、追求できるって。でも、セパルトゥラ(※本誌記載通り菅原さんはESP製マックス・カヴァレラモデルをレコーディングで使用)の音はいくらやっても全然、出ないんだよなぁ(一同笑)。
9mm Parabellum Bullet「Hourglass」
【対談後記】
わたし自身も岩手出身なので、非常に個人的な思いとして“東北出身者だけで対談を組みたい”という思いを密かに抱きタイミングを模索していました。偶然ながら3月11日を前にこの対談が誌面に掲載され、対談中わずかながらも(そもそもわたし自身は震災のことを対談のテーマに組み入れるのは違うと思っていたので、期せず)震災のことにも触れざるを得なかった内容になったことをとてもとてもありがたく思っています。
そもそもandropのことは本誌で菅原さんも語っておられる通りで姿が分からないデビュー当時のライブから拝見していたわたしからすると、レーベルが変わる前に初めてラジオ番組の方でお話を聞いた時にとても真摯に言葉を探しながら語る内澤さんの姿が印象的で、彼の言葉をもっともっと探したいなと思っていたところがありました。そこで今回は彼が話をしたい方と対談を組もうとまず考えたのですが、内澤さんもレーベルが変わったりしながらもバンドを続けている、同じように立ち位置が変わったりしながらもバンドを続けている方と組み合わせたいなと考えた時に、真っ先に浮かんだのが9mmの菅原さんで(さらに詳しい部分は本誌に書きました)、菅原さんもこの対談を快諾してくださったことに感謝しかなかったです。朝岡英輔さん撮り下ろしでPlayerではレアな外ロケのお写真も素敵なので、ぜひ誌面も併せてご覧ください。
andropもコンスタントにさまざまな場所や手法でライブを続けているし、9mmは今年アニバーサリーイヤーで9月には9年ぶりの日本武道館ライブを開催。今回をご縁に、両バンドのこれからの活動を追いかけていくつもりです!
Edit by CHIE TAKAHASHI Photo by EISUKE ASAOKA