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日向敏文 13年ぶりの新作アルバム『Angels in Dystopia Nocturnes & Preludes』

渡英、渡米してピアノや作曲、管弦楽アレンジを学び、1985年にALFAより『サラの犯罪』でデビューした日向敏文。以後はコンスタントにソロ作品をリリースしたほか、中山美穂やLe Coupleなどのプロデュース、そして『東京ラブストーリー』『愛という名のもとに』『ひとつ屋根の下』などのサウンドトラックを手がけるなど、コンポーザー、プロデューサーとして世界的にも高い知名度を誇る。その日向による13年ぶりのニューアルバム『Angels in Dystopia Nocturnes & Preludes』がリリースされた。

日向敏文『Angels in Dystopia Nocturnes & Preludes』
ソニー・ミュージックダイレクト MHCL-30735
高品質Blu-spec CD2  3,300円(税込)

『Angels in Dystopia Nocturnes & Preludes』は全24曲からなるピアノを主体とした壮大なスケールのアルバムとなっており、Dystopia(未来の見えない世界)に射し込むAngel(希望)という対極がコンセプト。近年話題の代表曲「Reflections」のピアノヴァージョンも収録されている。「Reflections」はそもそも1986年リリースの3rdアルバム「ひとつぶの海」に収録されていた楽曲だが、近年で世界中の音楽ファンから注目を集める楽曲となった。特にZ世代の若者を中心として大きな支持を集めているようで、全世界でのストリーミングが4,900万再生を突破したというから驚く。そのシェアの4割を占めるのは米国だそうだが、トータルで180を超える国と地域で再生されており、メインの年齢層は44%を占める18〜22歳というから、そうしたデータの発表自体も今の時代ならではという気がする。ビデオクリップで発表された「Angels in Dystopia」はトイピアノと思われる音色を導入部に、Lisa Grayによるチェロを筆頭とするストリングス、そして日向による重ためのピアノが絡む荘厳なイメージのインストゥルメンタルだ。また、先行シングルとなった「Two Menuets」はストリングスをフィーチャーしたが、アルバムではピアノソロで収録。いずれも「Menuet」(『サラの犯罪』/1985年)、収録のものと(3rd『ひとつぶの海』/1986年)のものを1曲にまとめた構成となっている。

ビデオクリップで発表されたALFA Music YouTube channelでは、アルファが擁する貴重な映像を筆頭に、世界の音楽ファンをターゲットにした様々な音楽コンテンツを配信している。『Angels in Dystopia Nocturnes & Preludes』は日向ならではのリリカルなメロディラインをフィーチャー。打楽器などはあえて用いずピアノ主体としつつも、中西俊博、グレイ理沙のストリングスを随所で採り入れている。「Phantom of Hope」「Sea of Galaxies」「Maurice at the Beach」「Thunder Sky」などはクラシカルさやアンビエント感も際立たせつつも、「Reflections」や一連のサントラ作品にも通じる日向ならではのメロディラインが味わえる。歌詞が乗せられそうな「Sylvia and Company」「Books and a Fireplace」、そしてラストナンバー「Moonlight and a Shadow」などは新たな日向の代表曲になるのではないか。コロナ禍でかき乱される世界各国のイメージや心象をピアノプレイに注いだような、ドキュメンタリー映画を観ているような感覚の68分にわたる大作である。(Player 編集長 北村和孝)

 

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